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今、わが国で最も罹患(りかん)数の多いがんは、大腸がんですが、その代表的な症状に「血便」があります。
がんの表面は組織がもろく、細かい血管が露出するなどして出血しやすくなっています。がんの近くを便が通る際など、機械的な刺激で容易に血が出て、これが便に混じるのです。
便の異変に気付くには、しっかり観察する習慣が大切です【時事通信社】
大腸は1.5メートルから2メートル近くある長い臓器ですが、特に、肛門に近い位置にがんができた場合は、血便の症状が表れやすい傾向があります。
◇便を観察する習慣
ところが、医療現場では「血便が頻繁に出ていたはずなのに全く気付いていなかった」という患者さんによく出会います。
「便の異変」というのは、便を観察する習慣がないと、案外、気付けません。
排便後、トイレットペーパーでお尻を拭き、これを便器に投入すると、便は隠れて見えなくなってしまうからです。その後、水を流せば、あっという間に便は視界から消えてしまいます。
例えば、直腸に大きな進行がんができ、毎日のように血便が出ているにもかかわらず、これに気付かず、「血液検査で貧血を指摘されて受診」というケースは少なくありません。
あるいは、重度の貧血でふらつきを覚えて内科を受診する、というケースもあります。
実際、ご自身の行動を思い出してみてください。きのうやきょう、どんな色の便が出たかを覚えているでしょうか。
自分の身体に起きた異変を察知するためにも、便を見る習慣を持っておくことは大切です。
◇目に見えないことも
血便は大腸がんの代表的な症状であるとはいえ、がんができたばかりの初期段階では、血便はないことも多く、それ以外の自覚症状も乏しいのが一般的です。
そうした背景から、大腸がんは検診による早期発見が重要とされ、わが国の「対策型がん検診」の対象になっています。症状がない段階から病気を見つける方法は、検診以外にないからです。
大腸がん検診では、いわゆる「検便」によって目に見えない微量な血液を検出します。これを便潜血検査と呼びます。見た目には明らかな血液を確認できない段階でも、微量なヘモグロビン(赤血球の成分)が便に含まれることがあるのです。
もちろん、大腸がんの中には便潜血検査でも見つけられないケースがあり、便潜血検査で診断できるのは30.0~92.9%とされています。(*)
とはいえ、検診によって大腸がんによる死亡率が低下することが明らかになっているため、公費が投入され、安価で受診できるようになっているのです。
今や、2人に1人はがんになる時代。
特に症状が表れやすい、あるいは検診が推奨されているがんについては、日頃から関心を持っていただけると、ありがたいと思っています。
(*)出典=国立がん研究センター「がん情報サービス」
(2022/04/06 05:00)
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