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中高年を中心に根強い人気の登山。日本生産性本部の「レジャー白書2022」によると、2021年の登山人口は約440万人で、コロナ前の約650万人から大きく減少したが、日常生活を取り戻しつつある今夏は増加するものと予測される。久しぶりの登山を安全に楽しむために、気を付けたいのが高山病だ。
東京医科大学病院(東京都新宿区)渡航者医療センターの増山茂兼任教授は「高齢者は特に急性高山病に注意が必要です」と話す。
急性高山病の主な症状
◇低山でも要注意
慢性高山病は高地に長く居住している人に見られる疾患だが、急性高山病は急に標高の高い場所に行き、酸素が不足することで起こる。頭痛に加えて、吐き気や嘔吐(おうと)などの消化器症状、疲労感・脱力感、めまい・ふらつき、睡眠障害といった症状のうち、少なくとも一つあれば急性高山病と診断される。
下山すれば自然に治る軽症から、早急に治療を必要とする高地肺水腫や高地脳浮腫など、放置すると命に関わるケースもあるため、「たかが高山病」と軽く考えるのは禁物だ。
通常、標高が2500メートル以上で発生しやすくなる急性高山病。高齢者ほど発症頻度が高く、症状も重くなる傾向がある。特に慢性疾患のある人はリスクが高く、「2000メートル以下の山でも発症する可能性は十分あります」。
登山以外でも、飛行機や電車などで高所にある観光地を訪問する場合にも高山病は起こり得る。「例えば、スイスのユングフラウ鉄道の終点駅は標高3454メートルです。一気に高度が上がるため、思わぬ症状に苦しむ利用者もいます」
◇喉渇く前に水分補給
予防には日常的な運動習慣と肥満対策が欠かせない。富士山など高い山に登る場合、事前に2000メートル以下の少し低めの山に登っておくことも予防につながるという。体を徐々に慣らすため、休憩を挟みながらゆっくり登るのも鉄則だ。
「喉の渇きを感じる力が弱くなる高齢者はあらかじめ時間と量を決めて、小まめな水分補給を心掛けてください。水やお茶よりも体への吸収率が高い一般的なスポーツドリンクを水で半分に薄めて飲むのがお勧めです」
急性高山病の第一症状である頭痛が起こったら、アセトアミノフェン配合の市販の解熱鎮痛薬を服用して安静にする。改善しなければ無理せず下山する。過去に急性高山病になった人は再発しやすいため、下山できない場合の備えとして利尿薬のアセタゾラミドを主治医に処方してもらうと安心だ。
増山兼任教授は「自然の中に身を置き、心身を豊かにしてくれる登山は素晴らしい経験です。急性高山病に対する正しい知識を持ち、しっかり体調管理をした上で楽しんでください」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/08/13 05:00)
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