治療・予防

高齢者こそ注意したい
~RSウイルス感染症(東北文化学園大学 渡辺彰特任教授)~

 呼吸器の炎症を引き起こすRSウイルス感染症。乳幼児の病気と思われがちだが、実際は高齢者の罹患(りかん)も多く、重症化するケースも少なくない。東北文化学園大学(仙台市)抗感染症薬開発研究部門の渡辺彰特任教授は「慢性呼吸器疾患などの基礎疾患がある高齢者は特に注意が必要です」と話す。

高齢者も重症例が少なくない

 ◇気付かぬ間に感染

 RSウイルスは、接触感染と飛沫(ひまつ)感染で広まる。感染すると4~5日の潜伏期間を経て発熱や鼻水、せきなどの症状が数日続く。多くは軽症で済むが、せきがひどくなる、呼吸の際に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜいめい)が出るなどの症状が現れ、肺炎に進展する場合もある。

 国内で発生する60歳以上のRSウイルス関連呼吸器疾患は年間約70万例、このうち入院は約6万2600例、入院例における死亡は4500例とも言われる。それでも認知度が低い理由として、検査法にも問題があると渡辺特任教授は話す。

 「RSウイルス迅速診断キットは、基本的に乳児以外は保険適用外のため検査をする人は少なく、自費で検査を受けても、小児と比べて排出ウイルス量は少量で排出期間も短いため陽性反応が出にくく、診断に至らないことが多いのです」

 日本での流行のピークは冬だが、近年は流行シーズンが不明確になっている。「医療従事者でも高齢者のRSウイルス感染症に対する意識が低く、長期療養施設などで気づかないまま集団発生している可能性があります」

 ◇ワクチンで予防可能

 RSウイルスは慢性呼吸器疾患や心臓病などの基礎疾患を持つ高齢者が感染すると、重症肺炎を引き起こす原因となることが知られている。「発症から数日して喘鳴も出始めたら、速やかにかかりつけ医を受診しましょう」

 治療は基本的に症状を和らげる対症療法しかない。高齢者がRSウイルスによる感染で肺炎を発症すると、インフルエンザなど他の呼吸器ウイルス肺炎と比べてやや症状が重く、入院期間も長くなる傾向がある。「長期入院による安静の後は日常生活動作の低下を招きやすくなるので、高齢者こそ感染予防が肝心です」

 昨年9月には60歳以上を対象としたRSウイルスワクチンが国内で初承認された。「自費にはなりますが、基礎疾患のある方は特に、かかりつけ医と相談の上、接種の検討をお勧めします」と渡辺特任教授は述べている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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