2024/11/29 05:00
なぜ尿検査では中間尿を使うのか
今回は、女性の「痩せ過ぎ」がもたらす健康被害のお話です。精神疾患やがん、感染症、種々の内分泌疾患、遺伝など痩せてしまう原因はいろいろとありますが、やはり多いのが過度なダイエットによるものです。男女ともに痩せ過ぎは危険な状態ですが、特に女性では女性ホルモンの不足によるさまざまな弊害が起こります。
過度なダイエットには危険がいっぱい。あなたは大丈夫?
◇無月経は重要なサイン
「痩せ過ぎると月経が来なくなる」というのは有名な話ですが、これも女性ホルモンの不足による代表的な症状です。では、なぜ痩せ過ぎていると女性ホルモンが不足するのでしょうか。
これにはレプチンというホルモンが大きく関係しています。レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、摂食中枢を刺激して食欲を抑制したり、エネルギー消費を増やしたりして、ヒトを痩せさせる働きをします。脂肪量が増えると、レプチンの分泌量も増えて体重減少を促し、正常な体重が維持されるという仕組みです。そして、このレプチンには、排卵に必要な女性ホルモンの分泌を促進し、生殖機能を調節する作用もあります。
痩せている方は脂肪量が少な過ぎるため、レプチンの分泌量も低下しています。すると、女性ホルモンの分泌も減少し、月経が止まってしまうのです。逆にいえば、月経が止まったということは、女性ホルモンを出せないほどレプチン分泌が低下した重篤な状態であることを示しています。
◇不可逆な病気になるリスクも
体重を戻せば月経が再開することも多いのですが、体に起こった変化のすべてが元通りになるわけではありません。骨がもろくなってしまう疾患である骨粗しょう症は、元に戻りにくいものの一つです。女性ホルモンの一種であるエストロゲンには、骨を作ることを促す作用があります。痩せた結果、このエストロゲンの分泌が低下すると、骨密度の減少を引き起こします。
実際に私の患者さんにも、20歳代であるにもかかわらず、骨密度が80歳代の平均値まで低下してしまった方がいました。骨を強くする治療をしても、一度下がってしまった骨密度を取り戻すことは非常に困難で、むしろ加齢に伴って骨密度はどんどん低下していきます。女性はただでさえ50歳以降の骨密度が減少しやすいと言われていますが、若い頃の痩せ過ぎによって、将来の骨折リスク増大に拍車が掛かってしまうのです。
◇真の「ダイエット」を
他にも、男女共通の痩せ過ぎの将来的なリスクとして、糖尿病やがんを発症しやすくなることなどがあります。また、極端な低体重は、低栄養による多臓器不全や致死的な不整脈、低血糖などを招き、生命を直接脅かします。
なりたい自分を思い描き、その実現のために努力するのは素晴らしいことだと思います。だからこそ、その努力の結果として、一生ものになりかねない健康被害を負ってしまう方がいることは悲しくてなりません。
英語の「diet」という単語は、実は「食生活により健康を保つこと」という意味です。真の「ダイエット」をする人が増えるよう願っています。(了)
渡邉昂汰氏
渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。
(2024/06/27 05:00)
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