2024/11/29 05:00
なぜ尿検査では中間尿を使うのか
肥満によって健康障害が生じている、もしくは生じる可能性が高い状態を「肥満症」といい、保険診療の対象となります。私は研修医の頃からこの肥満症に強い関心があり、この連載でもたびたび取り上げてきました。念願かなって、今年の春からは肥満症センターのある総合病院での勤務が始まり、糖尿病・内分泌内科医として高度肥満の治療に携わっています。今回は肥満症の二大治療についてご紹介したいと思います。
肥満をなかなか解消できない人は専門病院へ
一つ目は内科減量入院です。病院によってやり方はさまざまですが、基礎代謝量を下回る食事を摂取して、減量を行うことが基本となります。当院で行っているプログラムでは、初日は1日1400キロカロリーの食事からスタートして徐々に減らし、600もしくは800キロカロリーのとてもカロリーの低い食事を数日間摂取してもらいます。その後、患者さんごとに決められたカロリー数まで徐々に戻して退院となります。
食事制限なら自宅でもできると思う方もいるかもしれませんが、急激な摂取量低下は低血糖や不整脈などの危険を伴います。入院しているからこそ、厳しい食事制限を安全に行えるのです。また、リハビリテーション科やフィットネストレーナーによる運動指導も実施し、退院後も継続できる個々人にあった運動プログラムを構築していきます。
このように、減量のスタートダッシュを決めて、なおかつ継続可能な減量習慣を身につけるのが内科減量入院なのです。外来でも薬物治療や栄養指導は可能ですが、治療効果を考えると、やはり一度は入院していただくことをお勧めします。
◇胃の8割切除
内科治療ですべての方が痩せられればベストですが、中にはうまくいかないこともあります。特に高度肥満症の患者さんでは、なかなか減量できなかったり、減量と増量を繰り返してしまったりするケースが多いです。そこで行うのが二大治療の二つ目、減量代謝改善手術という外科治療です。日本で一般的なのは「腹腔(ふくくう)鏡下スリーブ状胃切除術」という胃の一部を切除する手術で、胃の容量を20%程度にして食事摂取量を減らします。
誰にでも手術を行えるというわけではなく、内科治療を6カ月以上行っても十分な効果が得られないBMI35以上の患者さんで、なおかつ糖尿病・高血圧・脂質異常症・睡眠時無呼吸症候群などの疾患を併発している方が対象です。2024年には対象者が広がり、BMI32以上35未満でも肥満合併症が複数あれば手術可能になっています。
肝心の効果ですが、術後2年間で元の体重から20~30%減少し、肥満合併症の改善も期待できます。実際、私の勤める肥満症センターでもこの手術は高い治療効果を挙げており、糖尿病や高血圧が寛解して、薬をすべて中止できた例もあります。
◇専門科で受診を
肥満症の治療にはさまざまな分野の専門家の力が必要です。一般の内科クリニックではどうしてもできることに限りがあるため、なかなか痩せられない高度肥満の方は、肥満症を専門に扱っている病院へ通院すべきだと、実際に診療に携わってみて強く感じました。一般社団法人日本肥満学会のホームページには、肥満症を診療できる全国83カ所の病院が記載されています。悩んでいる方はぜひ、かかりつけ医に相談し、紹介状を書いてもらって受診しましょう。肥満症で悲しむ人が一人でも減るように、私も努力を続けていきます。(了)
渡邉昂汰氏
渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。
(2024/09/27 05:00)
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