一流に学ぶ 減量手術のパイオニア―笠間和典医師

(第10回)
病気治り、生まれ変わる
費用対効果の考え方は

 減量手術は、皮下脂肪の吸引・切除のような美容が目的ではない。「健康を取り戻すことだ」と笠間和典氏は強調する。

 「肥満が原因で糖尿病や高血圧、高脂血症になっている場合、それぞれの薬を使っても、症状をコントロールしようとするだけで、治るわけではありません。糖尿病がコントロールできなければ人工透析を余儀なくされ、失明、足の壊死(えし)による切断など合併症が次々と起こって最終的には死に至ります。でも、減量手術を行えば、これらの病気が完治する可能性が高いのです」

 他にも、睡眠時無呼吸症候群、ぜんそく、心血管疾患、逆流性食道炎、尿失禁、関節痛、うつ病など、減量手術で改善あるいは完治する病気は多い。

 「肥満者に多い多囊胞性卵巣症候群(PCOS)は不妊の原因になりますが、不妊治療しても妊娠しなかった患者が、減量手術を受けた後で妊娠するケースも結構あって、当院だけでも40人くらいいます。よく、赤ちゃんを外来に連れて来てくれるんですけど、やっぱりうれしいですよね」

 たとえ肥満の状態で妊娠できたとしても、妊娠経過や出産時のリスク、生まれてくる子どもが将来的に糖尿病を発症するリスクも高くなる。

  「社会全体へのメリットも大きいです。例えば糖尿病が悪化して人工透析が必要になると、1人当たり年間500万円以上、10年続ければ約5000万円の医療費がかかります。健康保険が適用されるスリーブ状胃切除術の減量手術で完治すれば、手術にかかる数十万円で済むわけですから、大幅な医療費削減になります」。一方で患者も、たとえ自費診療の胃バイパス術で約200万円払ったとしても、糖尿病の治療費などを考慮すると安くつくそうだ。

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