一流に学ぶ 「美と健康」説くスポーツドクター―中村格子氏

(第3回)
手術に明け暮れ、外来で疲弊
予防の大切さに気付き、「原点」に

 「病院の外来業務は、まるで『業』だと思うくらい、やってもやっても終わらなくて。手術をするか、しないかを機械的に振り分けることくらいしかできないのが悩みでした」

 診察時間内にすべての患者の診察を終えるためには、1人にかけられる時間はどう考えても5分未満。横浜市立大学の大学院での博士課程を終え、整形外科医として本格的に働き始めた中村格子氏は、患者に向き合えない毎日にフラストレーションを感じていた。

 「長年の間に悪くなった体を『5分で』なんて、神様だって治せないですよ」
 患者が「3時間待って3分診療」と不満を訴えるのと同様、医師の側も十分に診察できないことへのジレンマを抱えている。

 「なぜ痛くなったのか、じっくり話をうかがって原因を探り、食事や運動、生活習慣の指導もしていかないと治らない。だから、手術が必要な患者さんだけを見つけて手術するのが仕事だと割り切るしかありませんでした」

 若いうちから靱帯(じんたい)再建、人工関節置換術、半月板手術など年間100件以上の手術を執刀するようになり、手術の腕は向上した。しかし、「これでいいのか」という気持ちはぬぐえなかった。

 もやもやした気持ちが確信に変わったのは、のちに日光市民病院(栃木県)の整形外科科長として働くようになってからだ。地域に密着し、患者の家族構成まで把握して、患者に寄り添う医療を心がけていたものの、やはり整形外科外来は大混雑。一人ひとりの患者とじっくり向き合うゆとりはなかった。

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