一流に学ぶ 難手術に挑む「匠の手」―上山博康氏

(第16回)両親と確執も、最期はみとる=家庭は円満、リタイア後の夢も

 ◇キャンピングカー

 「月曜から金曜までずっと病院で、土日にゴルフやったら、子どもたちとの時間がなくなっちゃうでしょう。無理してキャンピングカーを買って、赤ちゃんの頃から連れ歩いていました。家の中ではお母さんがスーパースターで僕は粗大ゴミだから、お父さんが優位に闘えるのはアウトドアしかない。カヌーに乗ったり、小麦粉にビールを掛けて発酵させてパンを作ったりしました」

 親としても妻に勝負を挑むところが、いかにも上山氏らしいが、全力で家庭を大事にしてきた背景には、やはり自身の幼少期の悲しい思い出があるのだろう。子どもの頃の親子関係は、自分と子どもとの関係にも連鎖するとよく言われるが、その逆もある。どの道を選択するかは自分次第なのだ。

 「2人とも親と比べられるのが嫌で、同じ道には進まなかったけど、子どもたちとの関係はすごくいいですよ」

 妻との約束は、キャンピングカーで全国を巡ること。以前、米国のイエローストン国立公園にキャンプに訪れた時、老夫婦と隣り合わせた。夫はニューヨークのビジネスマンだったが、リタイア後はマンションを売り払ってキャンピングカーを購入。夏は北方へ、冬はフロリダへ移動し、ゆったりした生活をしているという話を聞いた。

 「俺たちもリタイアしたら、まね事でいいから夏は北海道の北の方、冬は沖縄でゆったりした生活しようやって話をしてたの。もう、そろそろ準備段階に入ってもいいのかなって」(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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