一流に学ぶ 難手術に挑む「匠の手」―上山博康氏

(第18回)敵は病気、犠牲は覚悟=新たな手術への信念

 「完璧な手術は今まで一度もしたことがありません」。脳外科医として多くの命を救ってきた上山氏はそう話す。命が助かり後遺症もなく、患者が元気に退院したケースは成功だが、完璧とはいえない。出血を少なく、できれば1滴の血も出さない手術を、短時間で終えることを目指しているという。

 手術がうまくいかなかった患者は鮮明に覚えている。約6年前、沖縄・宮古島から来た女性には、夫との間に2歳、3歳、5歳の子どもがいた。リスクの高い脳底動脈流の症例で、「このままじゃ死ぬのは分かっているから、どうしても手術をしてほしい」と上山氏を頼ってきた。

 上山氏は検査結果を見て「リスクが高すぎる。やめませんか」と2度にわたり説得。それでも女性は「どうしてもやってほしい」と同氏に強く依頼した。

 「病気と闘いたくても、患者には武器がなかった。他の医者は自分が責任を取りたくないから『手術は無理だ』と言っていた。チャンスさえあげられないでいいのか、自分が患者だったらどうするか、真剣に考えて勝負にいきました」

 しかし、女性は術後1日しか生きられなかった。2日目に亡くなり、夫は「ありがとうございました」と言って、泣きながら病院を後にした。

 「残された子供たちの顔が何度も夢に出てきて、僕は脂汗をかいて飛び起きました」と上山氏。「手術で亡くなった患者のことは決して忘れない。なぜ、うまくいかなかったのか、どうすればうまくいくのか、徹底的に考え、新しい方法を見つけ出すまであきらめません」

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