一流に学ぶ 難手術に挑む「匠の手」―上山博康氏
(最終回)仕事から趣味へ、シフトも全力=人生のリベンジ、幕下りるまで
上山氏が作ろうとしているのは、父親が航空自衛隊で乗っていた軍用機セスナL19。「乗せてもらったことがあり、飛行機の実感が分かっているんです。それをおやじのお墓にささげたいと思って」と話す。
兄ばかりをかわいがった両親を許したわけではない、これはリベンジなのだと上山氏は言う。「僕のリベンジはすごく人格者の振る舞いをし、本当に世に役立つことをする。それでも認めないお前らに仕返しをしてやるということです」と複雑な思いを吐露する。
「例えば患者を助けることがリベンジだとしたら面白いでしょ。自分を愛さなかったお前らがほぞをかむ思いをさせてやる。もっと愛してやれば良かったと本気で思うくらい、いい人になってやるってね」
両親に愛された実感を持たずに育ったことが、上山氏の「負けてたまるか」という人生の原動力になった。医師になり多くの命を救った。育った環境のせいにして社会に背く行動を取ったり、自分の子どもに同じ仕打ちをしたりする転落の道もあったはずだ。しかし、上山氏はすべてをプラスに転換してきた。
「人生はすべて、自分が監督できる1回限りの舞台。主演は常に自分。幕が下りるまで、どう演じ切るかは自分で決めればいい。1幕目からずっと見ている観客も1人だけいる。それは自分なのだ」と上山氏は言う。
「どんなに名演技をしても自分をごまかすことはできません。常に見抜かれています。舞台もいつかは終わる。その時、最初から舞台を見た観客の僕が立ち上がって『いい人生だったよ、がんばったね』と言って拍手してくれたら、僕の勝ちです。そのために力尽きるまで頑張ります」(完)(ジャーナリスト・中山あゆみ)
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(2018/01/18 10:00)