一流に学ぶ 角膜治療の第一人者―坪田一男氏

(第1回)「ナンパ」でつくる人脈=山中伸弥氏も友人に

 ◇思ったら、即実行

 「男子校だったから、当然のことながら女の子とどうやったら友達になれるかを真剣に考えていました」

 街でかわいい女の子を見かけると、乳酸菌飲料を用意して、エスカレーターですれ違いざまに渡す。反射的に受け取ってしまった女の子の元に舞い戻り、それをきっかけに友達になるという方法を思い付き、行動に移した。

 「坪田君は健康的過ぎる。ちょっと陰のある男がいい」。高校2年の秋、付き合っていた女性にこう言われ、ふられてしまった。がっくり落ち込んでいると、母が「大丈夫よ。超明るい男が好きな女もいるのよ」と励ましてくれた。

 「暗くならなきゃいけないのかなと思っていたけれど、この言葉ですごく気が楽になりました」と振り返る。

 中高生時代に熱を上げた「ナンパ」が後に、研究生活に欠かせないコミュニケーション力として開花する。

 「ナンパってみんな悪いことのように感じるかもしれません。でも、僕の定義は自分が友達になりたいと思った人と友達になれる能力のことです。相手がどんな人かを探りながら、全然知らない人と会話するわけだから。僕の今の友達の80%は自分からアタックして友達になった人たちです」

 ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥氏が、米学術雑誌「Cell」にiPS細胞の論文を発表した時、論文の内容に感動した。すぐに講演を聞きに行き、一番前の席に座り、講演後にあいさつした。「初対面だったのだけど、僕が書いた『理系のための研究生活ガイド』という本を読んでくれていて、ぜひ共同研究をしましょうという話で盛り上がりました」。ノーベル賞を受賞する6年前、すでに坪田氏は山中氏を「ナンパ」し、友人になっていた。

(ジャーナリスト・中山あゆみ)


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