女性アスリート健康支援委員会 女子選手のヘルスケアを考える

女性アスリートに多い鉄欠乏性貧血 
原因と望ましい対策は

 ◇要治療でも鉄剤の注射は原則禁止

 実際に貧血治療を行う場合は、鉄剤を錠剤で服用し、鉄分を補給することが基本になる。川原会長は「鉄分が注射で大量に入ると、使い切れない分がどんどん蓄積し、肝臓や脾臓(ひぞう)、心臓などいろいろなところに問題が出てくる。基本的には鉄剤注射はしない」と説明した。

 熱心に耳を傾ける集会の参加者たち
 陸連のガイドラインによれば、鉄剤を錠剤で服用した場合、体内の鉄不足が解消されると、胃腸からの鉄吸収も自然と抑制されるので、鉄剤服用で余剰になった鉄は、体外に排せつされる。このため、注射による鉄剤投与と比べて、鉄分過剰になるリスクが低い。

 錠剤による胃腸障害の副作用が強かったり、出血などによる鉄損失が大きかったりする場合に限り、鉄剤注射も治療の選択肢となる。「例えば胃かいようで絶食になっていて貧血というような特殊な場合にのみ、鉄剤注射になる」という。

 通常、鉄剤を服用して1~3カ月くらいで体調が戻ってくる。川原会長は「その時点では貯蔵鉄が十分たまっていないので、治ってから3カ月くらいは治療を続けることが重要」と述べた。

 ◇過多月経の治療も選択肢に

 一方、鉄欠乏性貧血でも、月経時の出血が多い「過多月経」が影響していると、その治療も必要になる場合がある。

 百枝幹雄副院長
 聖路加国際病院の百枝幹雄副院長は、産婦人科医の立場から「月経随伴症の治療」をテーマに講演し、その中でスポーツ貧血のメカニズムを説明。「月経の出血量が多いということが貧血の原因であれば、量を減らすことを、より根本的な治療として考えたい」と話した。

 日本産科婦人科学会の「女性アスリートのヘルスケアに関する管理指針」によると、過多月経に対しては、低用量などのピルを投与したり、血が固まりやすくなる止血剤の「抗線溶薬」を投与したりする選択肢がある。「性交渉経験のある人には、黄体ホルモンを子宮の中に入れる「LNG―IUS(レボノルゲストレル放出子宮内システム)」を使用することもある」という。

 貧血も何より、予防が大切なのは言うまでもない。川原会長は最後に、食事から十分なエネルギーを取り、栄養素のバランスにも気を付け、鉄やたんぱく質に加えて鉄の吸収を促進するビタミンCの摂取も忘れないよう注意を促して講演を締めくくった。(水口郁雄)

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