「医」の最前線 緩和ケアが延ばす命

QOL改善、延命も-緩和ケア〔1〕
「末期がん」だけではありません

 ◇デメリットはない

(1)コーピング(病気やそれに関連するストレスの対処法)
(2)疾病を理解する支援
(3)アドバンス・ケア・プランニング(今話題の「人生会議」で、もしもの時のために、自分が望む医療やケアについて前もって考え、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合い共有する取り組みのことを指す)
(4)治療の意思決定
(5)療養場所の調整

診療する大津秀一医師

 症状緩和もせずに、話を聞いているだけのように見えて、実はこれらを組み合わせて提供するのが早期からの緩和ケアなのです。

●緩和ケアは末期だけではない
●緩和ケアはがんだけではない
●緩和ケアは症状緩和だけではない

 ご理解いただけたでしょうか。

 「受けることになんのデメリットもない」。ある方はそう言っていましたが、その通りです。一方で、緩和ケアの医療者が少なく、また早期から関与してくれる医師も潤沢というほどではなく、それが最大の問題です。

 ◇病・老いと付き合う

 先述したように、そもそも国は12年のがん対策推進基本計画(第2期)からずっと「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」をうたっており(現在第3期)、早期からの緩和ケアは何ら特別なことではなく、ただ全般的に医療者が、一般社会が追いついていないだけなのです。

 私は「市中の声」が何かを発展させる時に重要だと感じています。これからの連載で、緩和ケアについてさまざまなトピックを紹介していこうと思います。ぜひ緩和ケアという名称と、末期より早く受けるメリットがあるということを知っていただき、困っている方に教えていただければ幸いです。その蓄積が、病や老いとうまく付き合える社会につながってゆくと考えています。(緩和医療医・大津秀一)


【用語説明】スピリチュアルなつらさ=主として重い病気に伴い、生きる意味や死の恐怖などの存在に関するつらさが出現することを言う

(注1)出典 Temel JS et al. Early Palliative Care for Patients with Metastatic Non-Small-Cell Lung Cancer. NEJM. 2010; 363:733-742
(注2)出典 Zanghelini et al., J Palliat Care Med 2018, 8:5
(注3)出典 J Clin Oncol. 2018 Apr 10;36(11):1096-1102.

大津 秀一氏(おおつ・しゅういち)
 早期緩和ケア大津秀一クリニック院長。茨城県出身。岐阜大学医学部卒。緩和医療医。京都市の病院ホスピスに勤務した後、2008年から東京都世田谷区の往診クリニック(在宅療養支援診療所)で緩和医療、終末期医療を実践。東邦大学医療センター大森病院緩和ケアセンター長を経て、遠隔診療を導入した日本最初の早期からの緩和ケア専業外来クリニックを18年8月開業。
 『死ぬときに後悔すること25』(新潮文庫)『死ぬときに人はどうなる 10の質問』(光文社文庫)など著書多数


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