「医」の最前線 緩和ケアが延ばす命

QOL改善、延命も-緩和ケア〔1〕
「末期がん」だけではありません

 皆さん、緩和ケアをご存じでしょうか。

 「緩和ケアって、何?」という方もいれば、「ああ、がんの末期に行われるものでしょう」という方もいらっしゃるでしょう。特に緩和ケアというと末期のイメージが色濃いかもしれません。

 しかし、それ、もう古いです。

終末期に緩和ケアを受ける疾患の割合=「Global Atlas of Palliative Care at the End of Life」より筆者改変

 ◇WHOの定義

 世界保健機関(WHO)の緩和ケアの定義(2002年)を見てみましょう。

 「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、クオリティー・オブ・ライフ(QOL)を改善するアプローチである」

 どこにも「末期限定」と書いてありません。むしろ問題を「早期に発見」せよと書いています。末期になってからでは早期に発見できませんね。そう、つまり早くから介入すべしということなのですね。

 「でも日本では末期同然ではないか」。実はそうでもないのです。

参院本会議でがん対策基本法が全会一致で可決・成立し、一礼する川崎二郎厚生労働相(東京・国会内)2006年06月16日

 2006年にがん対策基本法が施行されると、07年のがん対策推進基本計画(第1期)で既に「治療の初期段階からの緩和ケアの実施」がうたわれています。12年からのがん対策推進基本計画(第2期)、17年のがん対策推進基本計画(第3期)では「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」が明示されているのです。

 ◇末期心不全も対象に

 もう10年以上も、末期限定ではないことが明示されているということなのですね。しかも、海外では緩和ケアの対象疾患はがんだけではありません。

 以前から日本で診療報酬が発生するがんとAIDS(後天性免疫不全症候群)の他に、18年からは末期心不全も対象となりました。診療報酬が生じると、その分野は発展します。そのためこの1年余り、心不全の緩和ケアが盛んに議論されるようになっています。

 ただ、がんと末期心不全以外は、緩和ケアに関してより発展途上というのが率直なところでしょう。


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