「医」の最前線 緩和ケアが延ばす命

乳がん患者がうつ発症
薬剤処方、自死を防ぐ―緩和ケア〔2〕 病や老いとうまく付き合う

 緩和ケアは末期に限らないこと、実はがんにも限らないことを前回解説しました。健康保険の適用があるのは現在、がんとAIDS(後天性免疫不全症候群)、末期心不全に限られていますが、身体だけではなくさまざまな問題が対象となることもお伝えしました。

イメージ(写真と本文は関係ありません)

 ◇抗がん剤治療で…

 今回は「人のつらさ」について掘り下げてみましょう。

 つらい症状は大きく以下の四つに分類されます。「身体のつらさ」「精神のつらさ」「社会的なつらさ」、「スピリチュアルなつらさ」です。このうち、あまり耳にしない「スピリチュアルなつらさ」とは、主として重い病気に伴って、生きる意味や死の恐怖などの「存在に関するつらさ」が出現することです。簡潔に言えば、「存在の意味のゆらぎ」でしょう。

 緩和ケアに従事する医療職や介護職は、この四つのつらさを把握するように努めます。

 これらは絡み合っており、相互に影響し、場合によってはそれがより深刻な生活の質の障害となって現れることもあります。

 このため、優先順位を考え、問題となっている度合いが高いものから丁寧に解決、その支援を図っていきます。

 具体的な例を挙げましょう。60代女性の乳がんの患者さんだった鈴木さん(仮称)は、抗がん剤治療の吐き気が強いとのことで、乳腺科の主治医から紹介されました。

 ◇能面のような顔に

 確かに吐き気はずっと続いているとのことでした。ただ、しっかり話を聞くと、この症状が続いているため次第に気持ちもうつうつとし、何も楽しめなくなり、不眠や食欲不振、体重減少など、さまざまな苦痛が合わせて出ているとのことでした。

 このような苦しさを訴えながら、鈴木さんは「自分はだめな人間なんだ」「こんなつらくて…もう死んだほうがいい」「生きている意味がない。早く楽にしてください」などと、とめどなく涙を流されました。


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