「医」の最前線 緩和ケアが延ばす命

乳がん患者がうつ発症
薬剤処方、自死を防ぐ―緩和ケア〔2〕 病や老いとうまく付き合う

 私は、ずっと続いている吐き気と、それに続いて発生したうつ病が、彼女にとって大きな問題になっていると判断しました。四つの苦痛はあくまでつらさを理解するための物差しで、分解して考えることも大切ですが、ただそれらの連関についてや統合して考えることも重要なのです。吐き気とうつ病の治療をきっかけに、鈴木さんの苦痛は大幅に改善し、緩和ケアの大切な目標であるQOL(生活の質)の向上が達成できたのでした。

大学病院(写真と本文は関係ありません)

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 ◇まずは担当の医師・看護師

 以上のように、緩和ケアは「人のつらさ」という幅広い領域を扱います。しかもそれらは、多くが主観的なものであり、本人のみしか体験していないことでもあるので、それをよくつかみ取るコミュニケーション技術も欠かせません。

 また患者の症状の原因や本質を鋭く判断する総合内科的な要素も必要なのです。いずれにせよ、対象となっている症状は多く、特に主たる対象疾患であるがんの場合は「遠慮せずに何でも相談するのが良い」ということになります。

 ただ緩和ケア従事者の数は限られています。まずは、主担当医、入院している場合なら担当看護師に症状について十分に申告、相談するのが重要です。それでもうまくいかない場合、次回以降に紹介する緩和ケアの専門チームが存在するのです。(緩和医療医・大津秀一)

大津 秀一氏(おおつ・しゅういち)
 早期緩和ケア大津秀一クリニック院長。茨城県出身。岐阜大学医学部卒。緩和医療医。京都市の病院ホスピスに勤務した後、2008年から東京都世田谷区の往診クリニック(在宅療養支援診療所)で緩和医療、終末期医療を実践。東邦大学医療センター大森病院緩和ケアセンター長を経て、遠隔診療を導入した日本最初の早期からの緩和ケア専業外来クリニックを18年8月開業。
 『死ぬときに後悔すること25』(新潮文庫)『死ぬときに人はどうなる 10の質問』(光文社文庫)など著書多数


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