こちら診察室 よくわかる乳がん最新事情

第6回 リンパ節の切除は範囲抑え、負担軽く
浸潤乳がん手術、「センチネル生検」で慎重に 東京慈恵会医科大の現場から

 乳がんの治療で手術を選択する場合、がんの浸潤(しんじゅん)がなければ乳房にある乳腺だけの手術になりますが、浸潤が認められれば、周囲のリンパ節に対する手術も必要になります。

 乳腺の乳管や小葉(しょうよう)で正常な細胞ががん化すると、がん細胞は見境なく増殖し、周囲の組織へ食い込んでいきます。浸潤とは、増殖したがん細胞が基底膜という膜を破って、乳管や小葉の外に出ていくことです。

 浸潤したがん細胞が周囲の血管やリンパ管に入り込むと、血液やリンパ液に混じって乳房の外に流れ出て、流れ着いた先で、また増殖します。この現象を「転移」と言い、リンパ管を介した場合はリンパ節に、血管を介した場合は骨や肺、肝臓、脳などの臓器に転移する可能性があるのは、前回の記事で紹介した通りです。

 浸潤乳がんに対する手術の選択では、乳管由来のがんか小葉由来のがんか、いわゆる組織型(浸潤乳管がんであれば、乳頭腺管がん、充実腺管がん、硬がんが代表的な型)がどのタイプになるか、といった違いは関係しません。

 乳腺の手術に関して、腫瘍を中心とした部分だけを切除(乳房温存手術)するのか、乳房全体を切除するのかは、非浸潤がんの場合と同様に、病変の大きさと乳房の大きさの比率、位置などの関係に加え、患者自身の希望などを総合的に考慮して決められます。

 ただし、病変が大きい場合やリンパ節転移が認められる場合には、手術前に抗がん剤投与などの化学療法や放射線照射といった術前治療を先行させ、病巣の縮小を図ってから手術を行います。

 ◇最初に転移が来るリンパ節をチェック

 リンパ節に対する手術は、実際にがん細胞の転移があるかどうかを、以前よりも慎重に見極めて、なるべく切除範囲を抑えて行うようになっています。

 以前の浸潤乳がん手術では、脇の下のリンパ節を脂肪組織ごと取り除く「腋窩(えきか)リンパ節郭清(かくせい)術」が必ず行われてきました。リンパ節は脂肪と区別がつきにくく、取り残しがないようにするためでした。

 しかし、腋窩リンパ節郭清術には、リンパ浮腫(むくみ)や腕を上げる際などの違和感といった後遺症が認められる問題がありました。しかも、手術前に触診や画像検査などで腋窩リンパ節への転移がないと判断され、実際には転移があったという症例は約3割しかありません。

 そこで、センチネルリンパ節生検という検査方法が登場しました。センチネルとは「見張り」という意味で、センチネルリンパ節とは乳がんからのリンパの流れが最初に到達する腋窩リンパ節のこと。がん細胞が転移すれば、最初にそこに転移が認められることになります。

 センチネルリンパ節は通常、色素や放射性同位元素(アイソトープ)で染めて標識を付け、見つけ出します。それを摘出して顕微鏡で調べ、もしもがん細胞の転移がなければ、他のリンパ節にも転移がないと見なせるため、それ以上の手術は不要になります。

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