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ケアマネジャーが代わり、人生も変わる 第19回

 ◇ケアマネジャーの努力

 大竹さんから、海辺でビールを飲みたい理由を聞き出したケアマネジャーは、夢の実現のために奮闘努力した。

 目指す海辺は車で1時間程度の距離だという。ケアマネジャーはまず、主治医に健康面でのお墨付きを取った。続いて、自分の上司を拝み倒し、何とか「仕事」として認めさせた。移動の足は、国土交通省による自家用有償旅客運送の登録を受けたNPO法人の移送サービスに目星を付けた。これなら、タクシーより格安で利用できる。上司の許可の下で、付き添いとして所属法人内の看護師に同行してもらうことになった。

 最後の仕上げとして、ケアマネジャーは休日を利用し、現地の下見に出掛けた。勤務時間内に行くことも考えたが、「まあ、折り合いのつけどころかな」と所属組織に少し遠慮してみたのだ。

 ◇後日談

 2カ月後、「無理な注文」が実現した。

 さらに2カ月後、大竹さんはデイケアで平行棒を握るなど、歩く練習を開始した。

 リハビリの様子を見に来たケアマネジャーは「あれ、何してるんですか?」と、とぼけてみせた。

 「死にたいんじゃなかったんですか?」

 「やめた」

 「なぜですか?」

 「やめたいからやめた」

 「もう、海辺には一緒に行けませんよ。結構、大変だったんですよ」

 「分かってるよ。今度は、自分の足で行く」(了)

 佐賀由彦(さが・よしひこ)
 1954年大分県別府市生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。フリーライター・映像クリエーター。主に、医療・介護専門誌や単行本の編集・執筆、研修用映像の脚本・演出・プロデュースを行ってきた。全国の医療・介護の現場を回り、インタビューを重ねながら、当事者たちの喜びや苦悩を含めた医療や介護の生々しい現状とあるべき姿を文章や映像でつづり続けている。中でも自宅で暮らす要介護高齢者と、それを支える人たちのインタビューは1000人を超える。

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