一人で多くの病気をもつ 家庭の医学

 高齢者は一つの病気にかかるだけでなく、一人で多くの病気をかかえることが多くなります(多病)。この理由は、「老化の理解」の「老化に伴う人体諸臓器の変化と関連する老年疾患」で述べているように、老化に伴う生理的変化がストレスによって病気という領域に進みやすいことがあります。
 たとえば、糖尿病は若いときには高血糖だけが問題ですが、70歳以上になれば視力低下(網膜症、白内障)、腎機能低下(腎症)、しびれなどの神経障害(神経症)、下肢の動脈硬化(閉塞性動脈硬化症)、脳梗塞など複数の病気につながります。最近では認知症のリスクを高めることが知られています。
 さらに、身体活動が低下したり、寝たきりになるとふえる病気として、低栄養、床ずれ(褥瘡〈じょくそう〉)、尿失禁、誤嚥(ごえん)などがあります。
 高齢者に多い症状、所見を「老年症候群」といいますが、入院高齢者では年齢を10で割った数ほどの症状が出てくるといわれています。老年症候群は、急性疾患関連、慢性疾患関連、廃用症候群関連の3つに分けることができます。

(執筆・監修:地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 理事長/国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐 鳥羽 研二)
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