性同一性障害〔せいどういつせいしょうがい〕 家庭の医学

 多くの人では、生物学的な性と心理的・社会的な性は一致するのですが、なかには生物学的な性とは反対の性として生きたい、みとめられたいといった願望をもつ場合があります。これを性転換症といい、性同一性障害のなかに分類されます。
 このような場合、外科的治療やホルモン療法により、からだを自分の好む性に転換したいという強い希望をもちます。人口数万人に1人程度で数は少ないのですが、性転換手術が始まったこともあり、性に対する社会的認識に一石を投じた意味で注目されています。1999年に日本精神神経学会による性転換手術のためのガイドラインが発表され、西欧諸国並みに日本でも性転換手術が始まりました。
 性同一性障害には、そのほかに小児期の性同一性障害や、一時的に異性体験をしたい(異性の衣服を着用するなど)といった両性役割服装倒錯症があります。
 なお近い将来に改訂される国際分類では、性同一性障害は性別不合へ名称が変更され、分類の場所が「精神および行動の障害」ではなく「性の健康に関連する状態」に変わります。これにより性の多様性が認められ、当事者に対するスティグマが減ることが期待されます。

【参照】形成外科:性同一性障害

(執筆・監修:高知大学 名誉教授/社会医療法人北斗会 さわ病院 精神科 井上 新平)
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