現状と考えかた 家庭の医学

 年齢によっても異なりますが、日本の女性全体では、出生数と中絶数の合計を妊娠の数と仮定すると、妊娠した女性の14%が人工妊娠中絶をおこなっており、既婚女性の約4分の1が人工妊娠中絶を経験しているといわれています。

●5歳階級別出生数、中絶数と中絶選択率(2021年度全国)
年齢(歳)出生数A中絶数B中絶選択率
B/(A+B)%
<20 5,5429,09362.1
20~2459,89630,88234.0
25~29210,43326,08711.0
30~34292,43923,3867.4
35~39193,17723,43510.8
40~4448,51712,01819.9
45~491,5971,25243.9
50≦212150.0
全年齢811,622126,174 13.5
厚生労働省令和3年人口動態調査と令和3年度衛生行政報告例より作成


 避妊が妊娠を避けるための手段であるのに対し、人工妊娠中絶は、妊娠を継続できない事情がある場合に、子宮内に妊娠が成立したあと胎児を子宮外に排出して妊娠を終了させるものです。出産することができないのならば、避妊法を徹底し、万一避妊法が充分でなかったときは緊急避妊をおこなって、できるかぎり妊娠を避けるべきです。しかし、妊娠してから出産できない諸事情が発生した場合や性暴力被害などによって予期せぬ妊娠をする場合などもあり、人工妊娠中絶を選択せざるを得ない場合もありえます。
 避妊しなかった、あるいは避妊の失敗等で人工中絶手術に至った場合、中絶手術をくり返さなくてすむよう、産婦人科医とよく相談し避妊の方法を見直すことが大切です。

(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 名誉院長 安達 知子