無痛分娩

■心理学的(精神的)無痛分娩法
 産婦の自主的な精神活動を通して産痛の緩和をはかる分娩(ぶんべん)方法で、古くは1933年にイギリスのリード(Read)が提唱した自然分娩法、ソ連(当時)の条件反射を利用した精神予防性無痛分娩法にさかのぼることができます。
 現在ではラマーズ法やソフロロジー式分娩法、リーブ法などが知られています。

□ラマーズ法
 独特の呼吸法による心理学的無痛分娩法です。1952年にフランスのラマーズ博士(Fernand Lamaze)が提唱した方法で、前述のソ連(当時)の精神予防性無痛分娩法を改良したものです。その後、アメリカの出産教育者グループによって普及し、日本には1970年前後から紹介されはじめました。日本では、東洋的な技法の影響も受けながら発展し、自然分娩の代名詞とまでになりました。
 いまでは、施設ごとにさまざまなラマーズ法がおこなわれていますが、その基本は「ヒッヒッフー」のリズムでパターン化した呼吸とからだの緊張をほぐす弛緩法です。実践にあたっては、出産前にお産についての正しい知識を得て出産に主体的に取り組む意志をもつこと、陣痛時の視焦点法や腹部マッサージ、腰部圧迫などの補助動作、家族や介助者とのあたたかな人間関係の形成といった環境整備を重視しています。ラマーズ法の普及で立ちあい出産がポピュラーなものになりました。

□ソフロロジー式分娩法
 ソフロロジーとは本来、こころとからだの安定や調和を得るためのトレーニング法を指しています。1976年にフランスのクレフ博士(Jeanne Creff)が産痛緩和の方法として分娩に導入したもので、西洋のリラックス法と東洋のヨガ、禅の呼吸法や瞑想を組み合わせた分娩法です。こころとからだをリラックスし、陣痛や出産を積極的にとらえようとするものです。
 クラシック音楽や自然の音などをくり返し聞き、眠りにつく間際の状態(ソフロリミナルな意識段階)で、分娩までのからだの変化や陣痛・娩出(べんしゅつ)についてのイメージトレーニングをおこない、分娩に対する不安や恐怖心を解消します。分娩時には、あぐらの姿勢をとり、陣痛時にはヨガの腹式呼吸をおこないます。
 ラマーズ法が陣痛を呼吸法でそらすのに対し、ソフロロジー式分娩法では、陣痛を母親になるために必要なよろこびのエネルギーとして肯定的にとらえます。

□リーブ法
 中国の気功法をもとにした日本独自の産痛緩和の方法です。1990年に橋本明、鮫島浩二両医師が提唱した方法で、気功の三要素(調身、調息、調心)を取り入れています。気功の三要素とは、気の流れやすい姿勢(調身)、気の流れやすい呼吸(調息)、気が流れているイメージ(調心)のことで、これにもとづいた心身のリラクゼーション、イメージ訓練、練習、ゆったりとした腹式呼吸を基本手技としています。分娩時には進行状況や胎児の位置を具体的に説明して、産婦のイメージを胎児と子宮口に集中させて分娩を積極的に進めます。常に胎児を意識することで、分娩を母子の共同作業ととらえて進めようとする考えかたです。
 これらの3方法はいずれも産婦が分娩経過を理解することで不安や恐怖を克服し、呼吸法やからだの弛緩(しかん)法と、補助動作を学んで分娩を積極的にむかえようとするものです。まったくの無痛となるわけではなく、産痛の緩和法と考えられています。

■麻酔による無痛分娩法
□吸入麻酔
 笑気ガスなどの麻酔薬を用い、陣痛発作が起こったら器具をもって吸入し、陣痛と陣痛の間は吸入器具をはずすというものです。

□局所麻酔
・硬膜外麻酔
 脊髄をおおっている硬膜の外側にチューブを挿入して麻酔薬を注入するものです。チューブを留置しておけば、何回も追加して注入することができ、痛みはとれますが産婦の意識ははっきりしています。第1期から第2期にひき続いておこなうことができます。
・その他の局所麻酔法
 分娩(ぶんべん)第1期の後半、子宮の開大による痛みをとるために、腟(ちつ)の入り口から子宮旁組織に麻酔薬を注射する旁頸管(ぼうけいかん)麻酔、分娩直前の会陰(えいん)部の痛みを除去するために、陰部の神経の本幹に腟あるいは皮膚から注射し、麻酔薬を注入する陰部神経遮断麻酔があります。いずれも麻酔が効いている時間は1時間以内なので、娩出(べんしゅつ)期全部の鎮痛はできません。

■物理学的無痛分娩法など
 はり麻酔による無痛分娩(ぶんべん)法、温罨法(おんあんぽう)、摩擦法、圧迫法などの理学的な緩和法などのほかに催眠暗示によって緊張をとる催眠法などが試みられていますが、その評価については不明です。

□会陰切開
 会陰(えいん)というのは腟(ちつ)の入り口と肛門との間の部分とその周辺をいいます。児頭が腟の入り口を通過しようとするとき、会陰部は非常に薄くひき伸ばされます。そのままにしておくと胎児の頭で会陰に裂傷ができることがあります。もちろん医師や助産師は、裂傷ができないように胎児の頭を押さえて会陰が伸びるのをまちますが、会陰がかたかったり、児頭を長時間押さえていることが望ましくないときは、局所麻酔をして会陰を切開します。切開した部分はきれいに縫合(ほうごう)されもと通りになります。

 裂傷が大きいと直腸や肛門に及ぶこともあるので、あらかじめ切開したほうがよいことも多いのです。いまは吸収糸といって自然に吸収される糸を使って縫合することが多いので抜糸もしなくてすみます。
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