麻酔で陣痛の痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)を選択し、出産する人が増えている。痛みへの恐怖を減らし、安心して出産に臨めるとして、東京都は10月から費用の助成を始める。国は出産費用の公的医療保険の適用を巡り、無痛分娩を対象に含めるかどうか検討。国や自治体の政策が今後の広がりに影響しそうだ。
 4月に次女を出産した都内の40代女性は、長女を産んだ際の痛みが激しく、今回は無痛分娩を選んだ。「無痛」とはいえ、痛みの感じ方には個人差があるようで、「思っていた以上に痛かった」。それでも、長女の時より痛みは軽く、産後の回復も早かったという。女性は「仮にもう1人産むのであれば無痛を選ぶ」と語った。
 無痛分娩は欧米を中心に普及。厚生労働省の調査によると、国内でも1カ月の実施件数は2020年9月は6008件だったが、23年9月は8140件と増加傾向にある。
 しかし、通常の出産費用に加え、10万~20万円ほどかかるため、費用面から断念する妊婦もいるという。都は今年10月から、女性が出産しやすい環境を整えるため、都内在住の妊婦が無痛分娩を行う場合、最大10万円を助成する。
 出産費用は現在、帝王切開などを除き公的医療保険の適用外。原則50万円の「出産育児一時金」が支給されるが、費用が一時金を超えるケースがあることから、国は少子化対策の一環として、保険適用に向けた議論を有識者検討会で進めている。
 検討会では無痛分娩も対象に含めるよう求める意見が上がる。ただ、全国には実施する医療機関がない県もあるほか、安全な施術には麻酔科医との連携が必要となるなど、体制整備の面で課題も多い。厚労省の担当者は「無痛分娩は出産に対する不安を軽くする効果がある」と認めた上で、「何よりも安全な実施体制を構築することが重要だ」と指摘した。 (C)時事通信社