生活習慣病を予防する食習慣
現代の日本人は食料過剰時代を生きています。そのなかで、生理的な欲求や嗜好に任せた食生活をしていれば、生活習慣病の発症は必至です。
生活習慣病とは高血圧、糖尿病、メタボリックシンドローム、慢性腎臓病(CKD)などと、これが引き金となって起こってくる狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患、脳出血や脳梗塞などの脳血管障害、そしてこれにがんを加えたものを総称しています。
また、食生活と密接に関係していながら、まだ疾患としての概念が確立されておらず、多くの人が病気と思っていないものに、肥満、脂質異常症、高尿酸血症・痛風などがあります。これらはいずれも冠動脈疾患の重大な危険因子です。
さらに喫煙や運動不足も広い意味では生活習慣病の原因となります。すなわち高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙などはすべて動脈硬化の危険因子と呼ばれ、広い意味で生活習慣病のもとといえます。
青年から中年にかけてが、これら生活習慣病の予防のための食生活を心掛けるもっとも重要な時期なのですが、実際にはこれらの世代はまだ生活習慣病に対する認識は低く、食生活にはきわめて無頓着です。
逆に、高齢者になってから、あれもいけない、これもいけない、と食生活の楽しみを放棄してしまっている人があります。しかし、これはあまり意味があるとはいえません。
生活習慣病を予防する食習慣は、青年から中年の人たちに守っていただきたい習慣なのです。逆に体重が減少するような高齢者では必要な栄養をしっかり摂るための食生活が求められます。
□栄養のバランス
まず、偏った食事や大食は避けましょう。魚、野菜(緑黄色野菜含む)、海藻、大豆製品、未精製穀類(玄米など)を取り入れ、バランスよく食べることがすすめられます。
また、肉の脂身などの動物性脂肪(飽和脂肪酸)、鶏卵、果糖を含む加工食品を大量にとることは、動脈硬化を進行させるおそれがあるため控えましょう。
□塩分のとりすぎは高血圧のもと
高血圧の原因の一つに、塩分(食塩)のとりすぎがあります。すでに解説しましたようにむかしにくらべればはるかに少なくなりましたが、まだそれでも日本人は1日約10gの食塩をとっています。これはあきらかにとりすぎです。日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日成人男性7.5g未満、成人女性6.5g未満にするようにすすめています。
食塩を減らす方法としては、
1.佃煮、梅干し、干し魚、塩辛い漬物、インスタント食品などを控える。
2.食卓塩の追加、かけじょうゆをしない。
3.みそ汁の量を控え、めん類の汁は飲まない。
4.ハム、ソーセージなどの加工保存食品をとりすぎない。
5.酸味や香辛料を利用して減塩する。
などがあげられます。
□動物性脂肪を控える
動物性脂肪を控えることも重要です。バターやラードなどには飽和脂肪酸が多く含まれ、血中のコレステロールを上昇させます。血清コレステロールが高い人にすすめられる食品は、魚類、大豆製品、脂肪の少ない肉、脱脂粉乳、植物油などです。
□糖質を控える
糖質のとりすぎは肥満につながり、また糖尿病の原因ともなります。たとえばコーラやジュース類にもけっこうな量の糖分が含まれていますし、また添加物による害の危険もあります。
□骨の老化を防ぐ食事
歯や骨の老化は個体差が激しいのですが、食生活としてはまずたんぱく質とカルシウムが不足しないような食生活をすることが重要です。その意味でも、牛乳はたいへん優れた食品です。
□日本人のための食生活指針
厚生省(当時)は1990年に個々人の特性に応じた実践しやすい食生活の基本的な考えかたをまとめて、「健康づくりのための食生活指針」を発表しましたが、その後、厚生労働省、農林水産省、文部科学省が連携して、「食生活指針」に改定しています。表に示しておきます。
(執筆・監修:自治医科大学附属さいたま医療センター 総合医学第1講座 主任教授/循環器内科 教授 藤田 英雄)
生活習慣病とは高血圧、糖尿病、メタボリックシンドローム、慢性腎臓病(CKD)などと、これが引き金となって起こってくる狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患、脳出血や脳梗塞などの脳血管障害、そしてこれにがんを加えたものを総称しています。
また、食生活と密接に関係していながら、まだ疾患としての概念が確立されておらず、多くの人が病気と思っていないものに、肥満、脂質異常症、高尿酸血症・痛風などがあります。これらはいずれも冠動脈疾患の重大な危険因子です。
さらに喫煙や運動不足も広い意味では生活習慣病の原因となります。すなわち高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙などはすべて動脈硬化の危険因子と呼ばれ、広い意味で生活習慣病のもとといえます。
青年から中年にかけてが、これら生活習慣病の予防のための食生活を心掛けるもっとも重要な時期なのですが、実際にはこれらの世代はまだ生活習慣病に対する認識は低く、食生活にはきわめて無頓着です。
逆に、高齢者になってから、あれもいけない、これもいけない、と食生活の楽しみを放棄してしまっている人があります。しかし、これはあまり意味があるとはいえません。
生活習慣病を予防する食習慣は、青年から中年の人たちに守っていただきたい習慣なのです。逆に体重が減少するような高齢者では必要な栄養をしっかり摂るための食生活が求められます。
□栄養のバランス
まず、偏った食事や大食は避けましょう。魚、野菜(緑黄色野菜含む)、海藻、大豆製品、未精製穀類(玄米など)を取り入れ、バランスよく食べることがすすめられます。
また、肉の脂身などの動物性脂肪(飽和脂肪酸)、鶏卵、果糖を含む加工食品を大量にとることは、動脈硬化を進行させるおそれがあるため控えましょう。
□塩分のとりすぎは高血圧のもと
高血圧の原因の一つに、塩分(食塩)のとりすぎがあります。すでに解説しましたようにむかしにくらべればはるかに少なくなりましたが、まだそれでも日本人は1日約10gの食塩をとっています。これはあきらかにとりすぎです。日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日成人男性7.5g未満、成人女性6.5g未満にするようにすすめています。
食塩を減らす方法としては、
1.佃煮、梅干し、干し魚、塩辛い漬物、インスタント食品などを控える。
2.食卓塩の追加、かけじょうゆをしない。
3.みそ汁の量を控え、めん類の汁は飲まない。
4.ハム、ソーセージなどの加工保存食品をとりすぎない。
5.酸味や香辛料を利用して減塩する。
などがあげられます。
□動物性脂肪を控える
動物性脂肪を控えることも重要です。バターやラードなどには飽和脂肪酸が多く含まれ、血中のコレステロールを上昇させます。血清コレステロールが高い人にすすめられる食品は、魚類、大豆製品、脂肪の少ない肉、脱脂粉乳、植物油などです。
□糖質を控える
糖質のとりすぎは肥満につながり、また糖尿病の原因ともなります。たとえばコーラやジュース類にもけっこうな量の糖分が含まれていますし、また添加物による害の危険もあります。
□骨の老化を防ぐ食事
歯や骨の老化は個体差が激しいのですが、食生活としてはまずたんぱく質とカルシウムが不足しないような食生活をすることが重要です。その意味でも、牛乳はたいへん優れた食品です。
□日本人のための食生活指針
厚生省(当時)は1990年に個々人の特性に応じた実践しやすい食生活の基本的な考えかたをまとめて、「健康づくりのための食生活指針」を発表しましたが、その後、厚生労働省、農林水産省、文部科学省が連携して、「食生活指針」に改定しています。表に示しておきます。
食生活指針 | 食生活指針の実践 |
---|---|
食事を楽しみましょう。 | ・毎日の食事で、健康寿命をのばしましょう。 ・おいしい食事を、味わいながらゆっくりよく噛んで食べましょう。 ・家族の団らんや人との交流を大切に、また、食事づくりに参加しましょう。 |
1日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを。 | ・朝食で、いきいきした1日を始めましょう。 ・夜食や間食はとりすぎないようにしましょう。 ・飲酒はほどほどにしましょう。 |
適度な運動とバランスのよい食事で、適正体重の維持を。 | ・普段から体重を量り、食事量に気をつけましょう。 ・普段から意識して身体を動かすようにしましょう。 ・無理な減量はやめましょう。 ・特に若年女性のやせ、高齢者の低栄養にも気をつけましょう。 |
主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。 | ・多様な食品を組み合わせましょう。 ・調理方法が偏らないようにしましょう。 ・手作りと外食や加工食品・調理食品を上手に組み合わせましょう。 | ごはんなどの穀類をしっかりと。 | ・穀類を毎食とって、糖質からのエネルギー摂取を適正に保ちましょう。 ・日本の気候・風土に適している米などの穀類を利用しましょう。 |
野菜・果物、牛乳・乳製品、豆類、魚なども組み合わせて。 | ・たっぷり野菜と毎日の果物で、ビタミン、ミネラル、食物繊維をとりましょう。 ・牛乳・乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などで、カルシウムを十分にとりましょう。 |
食塩は控えめに、脂肪は質と量を考えて。 | ・食塩の多い食品や料理を控えめにしましょう。食塩摂取量の目標値は、男性で1日8g未満、女性で7g未満とされています。 ・動物、植物、魚由来の脂肪をバランスよくとりましょう。 ・栄養成分表示を見て、食品や外食を選ぶ習慣を身につけましょう。 |
日本の食文化や地域の産物を活かし、郷土の味の継承を。 | ・「和食」をはじめとした日本の食文化を大切にして、日々の食生活に活かしましょう。 ・地域の産物や旬の素材を使うとともに、行事食を取り入れながら、自然の恵みや四季の変化を楽しみましょう。 ・食材に関する知識や調理技術を身につけましょう。 ・地域や家庭で受け継がれてきた料理や作法を伝えていきましょう。 |
食料資源を大切に、無駄や廃棄の少ない食生活を。 | ・まだ食べられるのに廃棄されている食品ロスを減らしましょう。 ・調理や保存を上手にして、食べ残しのない適量を心がけましょう。 ・賞味期限や消費期限を考えて利用しましょう。 |
「食」に関する理解を深め、食生活を見直してみましょう。 | ・子供のころから、食生活を大切にしましょう。 ・家庭や学校、地域で、食品の安全性を含めた「食」に関する知識や理解を深め、望ましい習慣を身につけましょう。 ・家族や仲間と、食生活を考えたり、話し合ったりしてみましょう。 ・自分たちの健康目標をつくり、よりよい食生活を目指しましょう。 |
(文部省決定、厚生省決定、農林水産省決定:平成28年6月一部改正) |
(執筆・監修:自治医科大学附属さいたま医療センター 総合医学第1講座 主任教授/循環器内科 教授 藤田 英雄)