療法にはどのようなものがあるか 家庭の医学

■理学療法
 運動療法によって身体機能の改善をはかります。
 運動療法として関節可動域(ROM:range of motion)の拡大、筋力の増強、まひを回復させる神経生理学的運動練習などがおこなわれます。そのほかに、寝返り・起き上がり・起立・歩行などの練習・指導による日常生活動作(ADL:activities of daily living)の回復、残存機能による代償、予防可能な2次的障害として、過剰な安静や不適切な介護により生じる廃用症候群の予防・改善なども目的とします。
 温熱療法や電気療法、水治療など物理的な刺激による鎮痛、機能回復を目的とした物理療法も治療に応用します。

■作業療法
 身体的・精神的障害を評価し、作業を通じてその障害の回復を促進することを目的とします。
 身体的障害では、巧緻(こうち)動作の回復など、上肢機能の回復をはかる訓練が主体となります。そのほか、自助具・装具の使用、環境整備を含む、食事、整容、更衣、排泄(はいせつ)、入浴、家事動作などに対する日常生活動作(ADL)訓練や、職業復帰に向けた訓練、高次脳機能障害の評価訓練などもおこないます。精神科疾患では、社会生活技能について、具体的な日常場面に即した訓練もおこなわれます。
 作業としては木工、革細工、粘土細工、陶芸、絵画などが好まれます。職業復帰のための評価や前段階の訓練などがおこなわれることもあります。

■言語療法
 言語概念の障害である失語症やまひ、失調による言語障害、吃音(きつおん)、口蓋裂(こうがいれつ)や、兎唇(としん)による発語障害、難聴に伴う言語障害などに対する言語評価や治療などを目的とします。
 訓練としては、言語そのものの訓練だけでなく、ジェスチャーや道具を利用してコミュニケーションの改善をはかることも指導されます。また、摂食(せっしょく)・嚥下(えんげ)障害に対するリハビリテーションも、言語聴覚士が中心となり、医師、看護師、栄養士などと連携しておこないます。

■物理療法
 物理療法には、温水や冷水を利用した水治療、赤外線や紫外線を利用した光線療法、ホットパックやマイクロウェーブ(極超短波)、あるいは超音波を利用した温熱療法、低周波電流を利用した電気療法などがあります。
 五十肩、関節障害、腰痛症など痛みを伴う疾患によくおこなわれます。頸椎(けいつい)症など脊椎に対する牽引(けんいん)療法も含まれます。

■義肢・装具療法
 切断肢に対して義手や義足の製作と、それらを装着しての歩行や、日常生活動作(ADL)の訓練がおこなわれます。また、まひによる機能障害を補うことや、関節の変形予防と矯正などを目的として、患部を固定し保護する補装具を用いての訓練などもおこなわれます。

■臨床心理と心理療法
 障害の克服は本人の主体的な努力が大切ですが、病気によっては抑うつ、依存性、粗暴行動など、さまざまな心理的障害を生じます。意欲を引き出すために、心理的にサポートすることが必要です。
 脳が損傷される病気では、症状として行動障害を生じることがあり、極端な場合は認知症のような高次脳機能障害がみられます。このような患者さんやその家族に対するカウンセリングや障害の評価も、専門家により分担されます。

■ソーシャルワーク
 障害者が復職や復学したり家庭生活に戻るためには、職場環境や家庭環境、経済的問題などを把握し、調整する必要があります。医療費に対する公的援助、社会福祉制度を利用するための手続きを紹介したり、いろいろな専門的施設に紹介したりすることが役立つこともあります。患者さんの家族に対するカウンセリングも含めて、社会的側面からの援助をおこないます。

(執筆・監修:帝京大学医学部リハビリテーション医学講座 准教授 中原 康雄)

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