五十肩のリハビリテーション 家庭の医学

 肩は人間が起立歩行をすることから、安定性がわるく、中年を過ぎるころから、関節周囲の損傷が重なりやすくなります。もっとも損傷されやすいのは、肩を回すときに作用する筋群が、腱板(けんばん)状に付着する部分で、それに連なる関節包に炎症が波及します。そのほかにも、肩関節では、損傷されて炎症を生じやすい部分が、いくつかあります。
 これらによって、肩を動かすときに痛みが出て、運動制限を生じる状態を、五十肩と呼んでいます。40~50歳代に多くみられ、肩関節部の疼痛(とうつう)と拘縮(こうしゅく)をきたすので、こう呼ばれており、日常会話でもよく使われるほど、多くの人が経験する疾患です。
 痛みの出始めた急性期には、疼痛や筋緊張を除くために無理をせず、動かさないでおくことが必要です。しかし、痛みが出ない範囲での運動はやる必要があり、ここで完全に安静にしておくと、治りにくくなります。痛みは悪化すると、すこし動いただけでも痛くて、寝返りもできず、不眠症になることがあります。
 痛みに対しては、蒸しタオルをさらにタオルでくるんで肩をおおうように当てておくと楽になります。入浴も痛みをやわらげ、筋緊張を緩和させます。
 痛みと筋緊張の緩和された状態で、関節の可動域(ROM:range of motion)を拡大するための運動練習をおこないます。はじめは、腕の重みが肩の負担とならないよう、寝た状態でおこない、症状が改善されてきてから座った状態でおこないます。

(執筆・監修:帝京大学医学部リハビリテーション医学講座 准教授 中原 康雄)
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