加齢に対するリハビリテーション 家庭の医学

 超高齢社会の到来により、リハビリテーションにおける高齢患者の割合は、確実に増加しています。日本の平均寿命は延び続けていますが、その平均寿命のうち、健康で自立した生活を送ることのできる期間を、「健康寿命」といいます。リハビリテーションは、障害を克服するためだけにおこなうのではなく、この健康寿命を延伸するためにも、大きな役割を果たします。
 高齢になると、身体的な老化現象とともに認知機能や精神面の老化も徐々に起こってきます。男女差や個人差もあります。これら老化現象は、誰にでも訪れるもので避けることはできませんが、心身の機能を保つことにより、遅らせることは可能です。
 基本は、日常生活のなかに、明るく楽しく安全に運動を取り入れるとともに、運動を生かす健康づくりにも、取り組んでいくということです。運動の強度は、体調にあわせて人と話しながら楽しみながらでもできる程度で、起床直後、就寝直前、寒い時間帯、暑い時間帯、食事の直後などの時間帯は避け、適切に水分補給をするといったことを、心掛けながらおこなっていきます。
 運動の代表的なものとしては、からだにやさしく、手軽な運動として、「ウォーキング」がよいとされています。効果はすぐあらわれるものではなく、効果が実感できるようになるには2~3カ月程度かかりますので、気長に、気楽に取り組みましょう。
 運動を生かす健康づくりのためには、栄養と量と質が過不足なく、十分に満たされているバランスのよい栄養をとるといったことも大切です。栄養は、ただ摂取するだけでなく、よく咀嚼(そしゃく)する必要もあります。
 また、外界からの情報を五感を通じて取り入れて新鮮な感動を重ね、他人と交際していくなかで、前頭葉など脳の機能を豊かにしていくといったことも、健康寿命の維持につながります。
 これら適切な運動、食育、知育などを日常生活に取り入れることで、老化を遅らせ、高齢期の健康を高めることが可能となります。

(執筆・監修:帝京大学医学部リハビリテーション医学講座 准教授 中原 康雄)
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