慢性副鼻腔炎(蓄膿症)〔まんせいふくびくうえん(ちくのうしょう)〕

[原因][症状]
 副鼻腔炎が遷延し慢性化したものが慢性副鼻腔炎です。以前はよく蓄膿症といわれていた病気です。
 症状はさまざまで、鼻漏(びろう:膿性のもの)、鼻閉(びへい)、後鼻漏、頭重感、嗅覚障害、鼻がにおう、などがあげられます。近年は抗菌薬の発達や衛生環境の改善により重症の慢性副鼻腔炎は減りましたが、軽症あるいは中等度症ではあるが治療の効果が弱く、なかなか完治にいたらない場合がふえています。さらに最近は、気管支ぜんそくアレルギー性鼻炎に合併する場合、または好酸球(こうさんきゅう)性炎症が関係する場合も多く難治性となっています。

[治療]
 まずは、X線検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査により病気の程度を判定することが重要です。真菌(カビ)による炎症が疑われる場合にはMRIも重要です。そして、鼻処置やネブライザー、さらには抗菌薬や粘液溶解薬の内服をします。
 抗菌薬は通常マクロライド系抗菌薬を長期にわたり(ふつう2~3カ月)服用します。これを少量長期療法といいますが、マクロライド系抗菌薬には細菌を殺すはたらきのほかに鼻漏分泌を減らし、粘膜表面の線毛運動を強化し分泌物の排出をうながす、炎症を増悪させる物質の産生を抑える、といったはたらきがあります。副作用は少ないのですが、念のために数カ月に一度は肝臓の機能などを血液検査により確認することが大切です。
 保存的な治療を数カ月おこなっても改善がない場合は手術をおこなうこともあります。手術は、内視鏡を用い、鼻の中の操作だけで、途絶してしまった鼻腔と各副鼻腔との交通をつくり直すという方法が主流です。これを機能的内視鏡下鼻内副鼻腔手術といいます。現在手術は、ほとんどの施設で全身麻酔下でおこなわれており無痛手術が可能です。さらに、難治性である好酸球性副鼻腔炎では生物学的製剤である抗IL-5抗体や、抗IL-5受容体抗体、抗IL-4/IL-13受容体抗体の皮下注射を併用することもあります(難病指定が必要です)。
 術後は退院したら即完治というわけにはいきません。しばらくは手術の影響で鼻内にかすがたまったり、粘膜がはれたりしますので定期的な通院処置が必要ですし、しばらくの間抗菌薬の服用が必要なこともあります。また、鼻洗浄やステロイド点鼻も根気強く続ける必要があります。

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