新型コロナウイルス感染症(COVID-19)〔しんがたころなういるすかんせんしょう(コビット-19)〕

 人や動物の間で広く感染症を引き起こすことで知られるコロナウイルスは、人に感染症を起こすものとしてはこれまで6種類が知られており、そのうち、深刻な呼吸器疾患を引き起こす型として、SARS-CoV(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)とMERS-CoV(中東呼吸器症候群コロナウイルス)が知られていました。新型コロナウイルス(略称:SARS-CoV-2)は、2019年に中国湖北省武漢市付近で発生が初めて確認された新しいタイプのSARS関連コロナウイルスです。新型コロナウイルスによる感染症を「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」と呼びます。現在までにパンデミックといわれる世界的大流行を起こしており、わたしたちの生活に重大な影響を与えています。
 おもな感染経路については、飛沫(ひまつ)感染と接触感染が考えられますので、手洗いやマスクの着用、せきエチケット、集団感染を防ぐ行動(「3密(密閉、密集、密接)」を避ける)などの感染対策が重要です。2023年5月8日以降、本症は5類感染症へ移行し、法律に基づく外出自粛は求められませんが、感染者は、5日間は外出を控え(5日目に症状が持続している場合は、症状消失から24時間程度が経過するまで)、10日間はマスクの着用等周囲への配慮が推奨されています。
 症状は、微熱を含む発熱、のどの痛み、せきといったかぜ症候群の一般的な症状で始まることが多いですが、新型コロナウイルス感染症の場合、変異株にもよりますが、そうした症状が比較的長いことが特徴的です。また、嗅覚(きゅうかく)障害・味覚障害をうったえる患者さんが多いという特徴があることもわかっています。そして、重症化する例では、発症から1週間前後でせき・たん・呼吸困難といった肺炎の症状が強くなってくることが報告されています。重症化する割合は、デルタ株の流行期あたりまでは2割弱と考えられていましたが、その後のオミクロン株ではかなり低下しています。さらに、感染しても無症状である人が一定数いることもわかっており、感染拡大を予防・対策するうえでの問題となっています。また、感染後に「コロナ後遺症」と呼ばれるさまざまな症状に悩む人がふえており、対策が急がれています。
 現在までに、レムデシビル(抗ウイルス薬)、デキサメタゾン(ステロイド薬)、バリシチニブやトシリズマブ(抗炎症薬)、さらに複数の新規抗ウイルス薬、中和抗体薬が開発され、COVID-19 治療薬として使用できるようになりました。COVID-19では、発症後数日はウイルス増殖が、発症後7日前後からは宿主免疫による炎症反応が主病態であると考えられています。したがって、発症早期には抗ウイルス薬または中和抗体薬、発症7日前後以降の中等症・重症の病態では抗炎症薬の投与が重要となります。
 また、新型コロナウイルス感染症に対する複数のワクチンが開発され、世界中で接種が進められており、感染拡大および重症化の予防効果が示されています。

(執筆・監修:順天堂大学大学院医学研究科 准教授〔呼吸器内科学〕 佐藤 匡)

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