東京医科歯科大学は東京工業大学と統合し、昨日(10月1日)東京科学大学として始動した。同大学病院は本日、院内で会見を開き、病院長の藤井靖久氏らが臨んだ。

世界最高水準のトータルヘルスケアを提供し、人々の幸せに貢献

 前東京医科歯科大学病院は、それでまで別だった医学部附属病院と歯学部附属病院が2021年10月1日に一体化。頭部から足先まで、さらに口腔内と全身を総合的に診療する医療を提供してきた。

 そして東京工業大学との大学統合により同院は昨日、東京科学大学病院として新たなスタートを切った。敷地内に建設中の医療工学研究所(大型の産学連携プロジェクトを担う新産業創成研究院の1つ)では、医科・歯科と理工学との融合により新しい医療の開発が行われる予定だ。

 藤井氏は、同大学病院の理念として「世界最高水準のトータル・ヘルスケアを提供し、人々の幸せに貢献する」を発表。基本方針として、①患者中心の安全、良質な全人的医療を提供する、②人間性豊かな医療人を育成する、③高度先進医療を開発、実践する、④社会に開かれた病院として、人々の信頼に応える、⑤力を合わせて患者さんと仲間たちを守る―を挙げた。

「以前から前東京工業大学との研究連携を行っていた。統合することで研究がさらに加速するものと期待している」「医学と歯学に加え理工学とも融合することで、これまでにない革新的な医療を開発・提供し、患者一人一人の健康と幸せに貢献することを目指す」と同氏は強調した。

 なお、名称変更に伴う処方箋や会計システムなどへの影響については、問題なく対応できていると報告した。

高度先進医療だけでなく未来の医療を担う病院に

 同大学病院主席副病院長の新田浩氏は、東京高等歯科医学校(東京医科歯科大学の前身)の創立者で初代校長である島峰徹氏の「歯科を究めるには右手に医学が、左手には工学が必要だ」との言葉を紹介。東京科学大学病院の誕生を受け、「これで歯科を究める準備が整ったことになる」と述べた。歯科領域は、齲蝕処置後の穴を埋めるコンポジットレジンの開発といった理工学との融合性が高く、今後はメタルフリーの治療法の開発が期待できるという。

 また前東京医科歯科大学病院病院長で、東京科学大学病院最高医療責任者(CMO)の内田信一氏は、同大学病院に医療工学の開発という新たな使命が加わったとの認識を示した。「今の高度先進医療だけでなく、未来の医療を担う病院として進んでいきたい」と話した。

 会見では理工学との共同研究例として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症例に施行された体外式膜型人工肺(ECMO)における血栓によるポンプの目詰まりを解消する研究(同大学大学院心臓血管外科講師・藤原立樹氏ら)、救急患者に対する医療者の視線を解析することで危険予知能を高め、医療の質を向上させる研究(同大学大学院救急災害医学分野教授・森下幸治氏ら)などが発表された。

変色するサイエンスゼリーが登場

 会見後には、東京科学大学病院銘板除幕式が行われた(写真1)。

写真1. 東京科学大学病院銘板除幕式

除幕式DSC09996.JPG

 また、会見が行われた会場では臨床栄養部が開発した、同大学のシンボルカラーである青と科学をテーマにしたサイエンスゼリー(写真2)が記者らに振る舞われた。ゼリーの青色は紫キャベツに多く含まれるアントシアニン色素によるもの。そこに酸性のレモン果汁をかけると徐々に紫に変色する。サイエンスゼリーは昨晩、入院患者の夕食時に提供され、好評を博したようだ。

写真2. サイエンスゼリー〔レモン果汁をかけると青色(右)から徐々に紫色へと変わる

サイエンスゼリーDSC09991.JPG

(編集部・田上玲子)