新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と自己免疫・自己炎症性結合組織疾患との関連について長期的に観察した研究は少ない。韓国・Yonsei University Wonju College of MedicineのYeon-Woo Heo氏らは、COVID-19が自己免疫・自己炎症性結合組織疾患の長期リスクに及ぼす影響を検討する後ろ向き全国人口ベース研究を実施。COVID-19発症後はさまざまな自己免疫・自己炎症性結合組織疾患のリスクが有意に上昇し、特に重症例やデルタ株流行期の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染例、ワクチン未接種例で顕著だったJAMA Dermatol2024年11月6日オンライン版)に報告した(関連記事「一部の皮膚症状がCOVID-19の予後不良と関連」「コロナ後遺症、感染時期でリスクに差」)。

大規模医療データのK-COV-Nコホートを使用

 最近の研究で、COVID-19が全身性エリテマトーデス(SLE)や関節リウマチ、血管炎、クローン病円形脱毛症などのリスクを高める可能性が示されている(JAMA Netw Open 2023; 6:e2336120EclinicalMedicine 2023; 63: 102154)。しかし、報告の多くは追跡期間が短く、一般的に進行が緩徐な自己免疫疾患の発症リスクを評価するには不十分である。そこでHeo氏らは、COVID-19発症後の自己免疫・自己炎症性結合組織疾患の長期リスクを調査した。

 使用したのは、韓国疾病管理庁のCOVID-19登録情報と国民健康保険サービス請求情報を統合して構築されたK-COV-Nコホートデータ。2020年10月8日〜22年12月31日にCOVID-19と診断された者(COVID-19群)と、2018年の一般健康診断受診者から抽出した対照群で自己免疫・自己炎症性結合組織疾患の発症率とリスクを比較した。

 COVID-19群において追跡期間の起算日(指標日)をSARS-CoV-2陽性確認日に設定し、180日以上追跡された例を選択した。両群の追跡期間を一致させるため、対照群の指標日はランダムに設定し、COVID-19群の指標日の分布を反映させ、両群間で特定日の登録比率が等しくなるよう調整した。

ベーチェット病は45%、クローン病は35%リスク上昇

 COVID-19群314万5,388例と対照群376万7,039例(合計691万2,427例、女性46.4%、平均年齢53.39歳)を解析対象とした。平均追跡期間はCOVID-19群で287.6日、対照群で287.7日だった。

 解析の結果、対照群に比べCOVID-19群は円形脱毛症〔調整ハザード比(HR)1.11、95%CI 1.07〜1.15〕、 全身脱毛症(同1.24 、1.09〜1.42)、 白斑(同1.11 、1.04〜1.19)、ベーチェット病(同1.45、1.20〜1.74)、クローン病(同1.35、1.14〜1.60)、潰瘍性大腸炎(同1.15、1.04〜1.28)、関節リウマチ(同1.09、1.06〜1.12)、SLE(同1.14、1.01〜1.28)、シェーグレン症候群(同1.13、1.03〜1.25)、強直性脊椎炎(同1.11、1.02〜1.20)、水疱性類天疱瘡(同1.62、1.07〜2.45)のリスクが有意に高かった。

長期のモニタリングとケアが重要

 サブグループ解析の結果、性、年齢などの人口統計学的因子が、それらの発症リスクと多様に関連することが示された。さらに、集中治療室への入室を要する重症例、デルタ株流行期のSARS-CoV-2感染例、ワクチン未接種例で特にリスクが高かった

 以上から、Heo氏らは「COVID-19とさまざまな自己免疫・自己炎症性結合組織疾患の長期リスクとの関連が見いだされた」と結論した上で、これらのリスクを軽減するには人口統計学的因子、重症度、ワクチン接種状況を考慮しながら、COVID-19発症者に対する長期的なモニタリングとケアを行うことが重要だと強調している。

(編集部・長谷部弥生)