翼状肩甲骨〔よくじょうけんこうこつ〕

[診断]
 肩甲骨が背中側に浮き上がるようにでっぱる状態のことを指します。腕をもち上げるときに腕の重さを肩甲骨が支えますが、肩甲骨を胸郭に固定する力が弱い場合には、腕の重さのために肩甲骨が胸郭から浮き上がってしまい、ちょうど翼のように肩甲骨の下の部分がもち上がることから、翼状肩甲骨と呼ばれます。肩甲骨を胸郭(肋骨)に安定化するためにはたらく前鋸筋が弱くなる長胸神経まひや肩甲骨を内側へ引き寄せるはたらきがある僧帽筋が弱くなる副神経まひのときに腕を上げようとすると肩甲骨の浮き上がりがみられます。症状としては、肩甲骨の浮き上がりと同時に腕が上がりにくく感じられ、前鋸筋まひの場合には前方への挙上が、僧帽筋まひの場合には側方への挙上がおこないづらい症状が出ます。まひ以外にも、肩関節拘縮(こうしゅく)の一部や、正常でもうまく筋の力を抜くことで随意的に肩甲骨を浮き上がらせることができる場合もあります。

[治療]
 翼状肩甲骨が神経まひによる場合には、まひが回復すれば症状は改善されます。また、肩甲骨周囲の動いている筋の代償作用などによって上肢の挙上障害は目立たなくなることもあります。挙上障害が強い場合には、筋移行術によりまひ筋の作用を代償させる手術や、前鋸筋と僧帽筋の両方がまひしている重症例では肩甲骨と肋骨を固定して肩甲骨を安定化する手術などで治療します。

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