慶應義塾大学名誉教授の竹内勤氏らは、メトトレキサート(MTX)で効果不十分な日本人関節リウマチ(RA)患者における開発中のブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬TAS5315の有効性と安全性を評価する第Ⅱa相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)を実施。プラセボと比べTAS5315では、米国リウマチ学会(ACR)分類基準20%以上の改善(ACR20)、50%以上の改善(ACR50)、70%以上の改善(ACR70)の達成割合がいずれも高く、疾患活動性の改善効果が示唆されたと、Ann Rheum Dis2023年5月22日オンライン版)に報告した。

パートA:12週、パートB:24週、全36週の検討

 日本の47施設が参加した同試験は、2つのパートで構成された。パートAでは、最大耐用量のMTXで効果不十分な中等度~高度の疾患活動性を有する20~64歳のRA患者91例を登録。TAS5315 4mg、同2mg、プラセボを1日1回12週間経口投与する3群にランダムに割り付けた。このうちパートAを完遂した87例をper-protocol set(PPS)とした。内訳は、TAS5315 4mg群が28例(平均年齢52.0歳、女性78.6%)、同2mg群が29例(同51.9歳、69.0%)、プラセボ群が30例(同53.5歳、76.7%)だった。

 パートBに進んだのは84例。パートAでTAS5315を投与した2群は同一用量をさらに24週間継続。プラセボ群はTAS5315 4mg群または同2mg群にランダムに割り付けた。MTXは全試験期間の36週を通じて全例に投与した。

SDAI 11以下、DAS28-hsCRP 3.2未満、同2.6未満で有意な改善

 主要評価項目とした12週時のPPSにおけるACR20の達成割合は、プラセボ群の60.0%に対し、TAS5315(4mg+2mg)群では78.9%と高い傾向が認められたが、有意差はなかった(P=0.053)。副次評価項目としたACR50(13.3% vs. 33.3%、P=0.072)およびACR70(0.0% vs. 7.0%、P=0.294)も同様だった。

 副次評価項目のうち12週時の疾患活動性スコア(SDAI)11以下(低疾患活動性)の達成割合は、プラセボ群の16.7%に比べTAS5315群では43.9%と有意に高く(P<0.05)、寛解(SDAI 3.3以下)の達成割合はプラセボ群の0%に比べTAS5315群では7.0%と高い傾向を示したものの有意差はなかった。

 また、12週時の高感度C反応性蛋白の値に基づく28関節の疾患活動性スコア(DAS28-hsCRP)3.2未満の達成割合は、プラセボ群の13.3%に対し、TAS5315群で42.1%、DAS28-hsCRP 2.6未満の達成割合はそれぞれ3.3%、29.8%と、いずれもTAS5315群で有意に高かった(全てP<0.01)。

出血リスク高まる可能性も

 日常的な身体機能の評価指標であるHAQ-DIスコアの12週時におけるベースラインからの平均変化量は、プラセボ群の-0.21に対し、TAS5315群では-0.39と有意な改善が認められた(P<0.05)。

 パートAにおける有害事象の発生率は、TAS5315 4mg群が41.4%、同2mg群が44.8%、プラセボ群が57.6%で、TAS5315群の有害事象はいずれも軽度〜中等度だった。TAS5315群で頻度が高かったのは、鼻咽頭炎(10.3%)、瘙痒(6.9%)、膀胱炎(5.2%)だった。

 36週間で、9例が出血イベント(皮下出血、点状出血、紫斑、小脳出血鼻出血)を経験した。このうち、TAS5315の中止により3例が回復した。重度小脳出血の1例を除き、いずれも軽度だった。

 竹内氏らは「MTXで効果不十分な中等度~高度の疾患活動性を有するRA患者へのTAS5315投与は、出血に対する忍容性がある場合、一定の治療効果を発揮する可能性が示された。今後は、TAS5315のリスク・ベネフィットを検討する必要がある」と結論している。

 また、試験期間を通じてTAS5315を継続した群に比べ、プラセボからの切り換え群で試験完遂率が低かった理由について、同氏らは「パートAでプラセボを投与された期間に、病勢が進行したためと考えられる」と推察している。

(菅野 守)