片頭痛は早期発症虚血性脳卒中リスクを男女ともに高めることが分かった。デンマーク・Aarhus UniversityのCecilia Hvitfeldt Fuglsang氏らは、同国の医療登録を用いた人口ベースのコホート研究により、片頭痛が60歳以下での早期発症心筋梗塞、虚血性/出血脳卒中リスクに及ぼす影響を検討。その結果をPLoS Med 2023年6月13日オンライン版)に報告した。

女性患者18万例、男性患者4万例を解析

 片頭痛は心筋梗塞および脳卒中のリスクを上昇させ、関連には性差があることが知られている。既報では、片頭痛は主に若年女性の虚血性脳卒中リスクを高めると報告されている。しかし、片頭痛患者の心筋梗塞、出血脳卒中のリスク上昇が主に女性と関連しているかどうかは明らかでない。そこでHvitfeldt Fuglsang氏らは今回、デンマークの人口ベースのコホート研究で片頭痛が60歳以下での早期発症心筋梗塞、虚血性/出血脳卒中リスクに及ぼす影響を男女別に検討した。

 同国の処方登録National Prescription Registryデータから、1996~2018年に片頭痛薬を少なくとも2回処方された18~60歳の片頭痛患者22万437例(女性17万9,680例、平均年齢41.5歳、男性4万757例、同40.3歳)を同定。これらの片頭痛患者と性、指標日(2回目の処方箋を片頭痛薬に引き換えた日)、出生年をマッチングした片頭痛のない対照110万2,140例(女性89万8,365例、男性20万3,775例)を1:5で組み入れた。片頭痛が心筋梗塞、虚血性/出血脳卒中に及ぼす影響を、片頭痛がない人に対する片頭痛患者の心筋梗塞、虚血性/出血脳卒中の絶対リスク差(RD)およびCox回帰分析で調整したハザード比(aHR)を算出して検討した。

 ベースラインの患者背景を見ると、対照に比べて同性の片頭痛患者はやや社会経済的地位が低く、男性に比べ女性は教育レベルが高く、男女とも86~87%に併存症がなかった。

 対照に比べ、同性の片頭痛患者で高血圧、静脈血栓塞栓症肥満、甲状腺疾患、気分障害、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、脂質異常症の罹患率が高く、β遮断薬、ACE阻害薬/アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、利尿薬、抗血小板薬、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)を処方されている割合が多かった。

心筋梗塞、出血脳卒中は女性のみ関連

 中央値で8.8年間追跡した結果、対照における早期発症心筋梗塞の絶対リスク(AR)は女性に比べ男性で高く〔AR 1.0%(95% CI 1.0~1.1%)vs. 3.1%(同2.9~3.2%)〕、早期発症虚血性脳卒中についても同様の結果だった〔同1.2%(1.1~1.2%)vs. 1.9%(1.8~2.0%)〕。一方、早期発症出血脳卒中リスクについては男性(同0.7%、0.6~0.8%)と女性(0.6%、0.5~0.6%)で同等だった。

 対照に対する片頭痛患者の早期発症心筋梗塞のRDは男性が0.3%(95%CI -0.1~0.6%、P=0.061)、女性が0.3%(同0.2~0.4%、P<0.001)で、片頭痛の女性ではリスクが22%有意に高かったが(aHR 1.22、95%CI 1.14~1.31、P<0.001)、男性では有意な関連は認められなかった(同1.07、0.97~1.17、P=0.164)。

 対照に対する片頭痛患者の早期発症虚血性脳卒中におけるRDは男性が0.5%(95%0.1~0.8%、P<0.001)、女性が0.3%(同0.2~0.4%、P<0.001)で、片頭痛の男性でリスクが23%(aHR 1.23 、95%CI 1.10~1.38、P<0.001)、女性では21%(同1.21、1.13~1.30、P<0.001)有意に高かった。

 対照に対する片頭痛患者の早期発症出血脳卒中におけるRDは男性が-0.1%(95%CI -0.3~0.0%、P= 0.176)、女性が0.1%(同0.0~0.2%、P=0.011)で、片頭痛の女性ではリスクが13%有意に高かったが(aHR 1.13、95%CI 1.02~1.24、P=0.014)、男性では有意な関連は認められなかった(同0.85、 0.69~1.05、P= 0.131)。

 今回の研究結果から、Hvitfeldt Fuglsang氏は「これまでの報告とは異なり、片頭痛と虚血性脳卒中リスク上昇との関連は60歳以下の成人男女で大差はないことが分かった。片頭痛と早期発症心筋梗塞、出血脳卒中リスクの関連については女性でのみ有意であったが、絶対リスクは小さかった」と結論。さらに「片頭痛患者は女性に多いことから、片頭痛関連疾患による社会的負担は女性でより大きい可能性が示された」と述べている。

(大江 円)