治療・予防

「SAPHO症候群」に注意
皮膚疾患と骨関節炎の合併

 SAPHO(サフォー)症候群は皮膚疾患に骨と関節の炎症が合併する病気だ。東京慈恵会医科大学付属病院(東京都港区)リウマチ・膠原(こうげん)病内科の野田健太郎医師は「まれな病気で、分からないことも多いですが、診断が付いたらしっかりと治療する必要があります」と話す。

 ◇前胸部の腫れと痛み

 同症候群は、1987年にフランスの医師が、特徴的な症状である「滑膜炎(関節の炎症、Synovitis)」「ざそう=重症のにきび、Acne)」「膿疱(のうほう、Pustulosis)」「骨化過剰症(Hyperostosis)」「骨炎(Osteitis)」の頭文字を取り、疾患概念としてまとめた。

 特徴的な症状は、患者の8~9割に見られる胸骨や鎖骨部を中心とした前胸部の炎症で、痛みが出て腫れて盛り上がってくる。野田医師は「手のひらや足裏に膿疱ができる掌蹠(しょうせき)膿疱症や尋常性乾癬(かんせん)、重度のにきびなど、皮膚疾患のある人に合併します」と説明する。

 症状の出方には、①皮膚疾患が先行②骨関節炎が先行③両方同時に発症―の3タイプがある。皮膚疾患を伴わない場合は、他の疾患がないかを慎重に見極める必要があり、診断に時間がかかる場合もあるという。

 骨の炎症は前胸部以外にも起こる。一般にはX線で痛みの部位を撮影して調べるが、全身の骨の炎症を写し出す「骨シンチグラフィー」で初めて病変部位が判明するケースもある。

 原因ははっきりとは分かっていない。膠原病のように遺伝的要素に、環境要因が加わることで発症するのではないかと考えられ、にきびの原因となるアクネ菌の関与も疑われている。野田医師も「微生物に対する反応には個人差があり、人により骨や関節に炎症が生じるのかもしれません」と仮説を立てる。

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