肥満は、多くの疾患や死亡につながる主要な危険因子である。肥満症の治療薬として、欧米ではGLP-1受容体作動薬セマグルチドおよびリラグルチドの注射製剤が数年前から使用されており、前者は日本でも今年(2023年)3月に肥満症に対する適応を取得した。ただ、注射剤であることが普及の妨げとなっている。カナダ・McMaster UniversityのSean Wharton氏らは、成人の肥満に対する経口GLP-1受容体作動薬orforglipron 1日1回投与の有効性と安全性を検討する第Ⅱ相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験を実施。プラセボと比べorforglipronは体重減少に有効で、その効果は用量依存性であること、安全性は同クラスの注射剤と同等であることをN Engl J Med2023年6月23日オンライン版)に報告した。

3カ国でorforglipron 4用量とプラセボを比較

 GLP-1受容体作動薬セマグルチドには経口薬もあり、2型糖尿病の治療薬として承認されているが、現在の承認用量による体重減少効果は注射剤と比べて低いことが報告されている。orforglipronは2型糖尿病および肥満症の治療薬として開発中の非ペプチドGLP-1受容体作動薬で、サイクリックAMPシグナル伝達に対する作用が強く受容体の脱感作が生じにくいとされる。

 同試験の対象は、カナダ、米国、ハンガリーで登録した肥満または過体重に体重関連の併存疾患を1つ以上有する非糖尿病の成人272例〔年齢54.2歳、体重108.7kg、BMI 37.9(いずれも平均値)、女性59%〕。orforglipron 4用量群(12 、24、36、45mgのいずれかを1日1回投与)とプラセボ群に5:5:6:6:5でランダムに割り付け、36週間治療した。実薬群は全て少量で開始し、16週までを漸増期間とした。36mg群と45mg群はそれぞれ、開始用量(2mg/3mg)が異なる2つの亜群に1:1で分割した。

 主要評価項目は26週時におけるベースラインからの平均体重変化率とし、副次評価項目は36週時におけるベースラインからの平均体重変化率などとした。

全用量でプラセボより優れ、効果は用量依存性

 26週時におけるベースラインからの平均体重変化率は、プラセボ群の-2.0%に対しorforglipron 12mg群で-8.6%、24mg群で-11.2%、36mg群で-12.3%、45mg群で-12.6%と、用量依存性の体重減少効果が認められた。

 36週時の平均体重変化率も同様に、プラセボ群の-2.3%に対しorforglipronの4群では-9.4~-14.7%と、用量依存性の体重減少効果が示された。

 36週時までに10%以上の体重減少を達成した患者の割合は、プラセボ群の9%に対し、orforglipronの4群では46~75%だった。プラセボ群と比べorforglipron群では、事前に規定された全ての体重関連指標(体重減少5、10、15%以上、BMI、ウエスト周囲長)および心血管代謝指標(収縮期血圧、空腹時の脂質プロファイル)が改善した。

安全性は同クラス薬の報告と一致

 orforglipron群の有害事象で最も多かったのは、軽度~中等度の消化管関連有害事象(悪心・嘔吐便秘下痢、噯気)だった。これらは主に用量漸増中に発生し、orforglipron群全体の10~17%が服用を中止した。orforglipron 24mg群で消化器関連有害事象が最も頻発した点について、Wharton氏らは「増量スケジュールがタイトだったためではないか」と推察している。

 orforglipronの全体的な安全性プロファイルは、他のGLP-1受容体作動薬と一致していた。

 以上から、同氏らは「経口非ペプチドGLP-1受容体作動薬orforglipronの連日経口投与は体重減少と関連し、用量依存性の効果が示された。orforglipron群で報告された有害事象は、これまでにGLP-1受容体作動薬の注射剤で報告されたものと同様だった」と結論している。

(小路浩史)