厚生労働省薬事・食品衛生審議会薬事分科会の医薬品等安全対策部会安全対策調査会は7月25日、医療用のアセトアミノフェン含有製剤について、関連学会などからの要望などを踏まえ、「重篤な腎障害」「重篤な心機能不全」「消化性潰瘍」を含む5つの集団について添付文書の禁忌の項から解除することを了承した。添付文書の改訂の中身については、今後審議する方針。

7集団のうち5集団を禁忌の項から削除

 アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬として広く使用されているが、添付文書では禁忌欄に、①消化性潰瘍(症状が悪化する恐れがある)、②重篤な血液の異常(重篤な転帰をとる恐れがある)、③重篤な肝障害、④重篤な腎障害、⑤重篤な心機能不全(循環系のバランスが損なわれ、心不全が増悪する恐れがある)、⑥本剤の成分に対し過敏症の既往歴がある、⑦アスピリン喘息〔非ステロイド抗炎症薬(NSAID)による喘息発作の誘発〕またはその既往歴のある患者(アスピリン喘息の発症にプロスタグランジン合成阻害作用が関与していると考えられる)ーの7集団が記載されている。

 今回、厚労省は日本運動器疼痛学会から、7集団のうち「重篤な腎障害」および「重篤な心機能不全」について解除の要望を受けたことから、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に調査を依頼。同学会は禁忌解除の理由として、現在発行されている成書、ガイドラインなどアセトアミノフェンはNSAIDに比べ、腎機能、体液貯留などに対する影響が少ないこと、腎障害および心機能障害例に使用されるケースが少なくない状況で、禁忌の設定により適切な薬物治療の妨げになっていることを挙げている。

 PMDAは、「消化性潰瘍」「血液の異常」「アスピリン喘息」の3集団についても、関連する成書、ガイドラインなどでアセトアミノフェンが治療選択肢となる旨が確認されたとして、これらの禁忌解除の可否についても併せて調査を行った。

一般用医薬品も今後検討へ

 調査は、国内外の成書、ガイドラインの記載状況、海外添付文書の記載状況、副作用報告、関連する公表文献などを用いて検討。まず、国内における副作用症例報告のうち、今回検討している禁忌集団に該当する可能性があり、かつ各禁忌患者の設定理由に該当する症例を調べたところ、調査対象品目との因果関係が否定できない事例は確認されなかった。さらに、研究報告における鎮痛薬関連の有害事象の解析結果でも、アセトアミノフェンに関する記載は認められなかった。

 これらの結果を踏まえ、安全対策調査会では「重篤な心機能不全」「消化性潰瘍」「重篤な血液の異常」の3集団については、禁忌の頁から削除するとともに、使用に関して「特定の背景を有する患者に関する注意」(旧記載要領の「慎重投与」)の項で注意喚起を行うことを了承。「重篤な腎障害」についても禁忌の項から削除し、投与量および投与間隔の調節を考慮する旨を記載することとした。

 また、「アスピリン喘息」については、単剤およびジプロフィリン・アセトアミノフェンなどの配合剤を禁忌の頁から削除するとともに、単剤の用法・用量は1回300mg以下とする旨の注意喚起を行う。トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合剤は「非がん性慢性疼痛」の適応に対しては「1回1錠とする」「配合剤を用いず、個別のアセトアミノフェン製剤を用いた用量調節を考慮する」といった注意喚起を行う。一方、「抜歯後の疼痛」に対して使用する場合は引き続き禁忌とする。

 今回の禁忌解除は、アセトアミノフェン単剤に加え、アセトアミノフェンを含む配合剤も対象となる。ただし、NSAIDを含む配合剤については対象外とした。

 なお、アセトアミノフェンを含有する一般用医薬品についても、リスクは医療用医薬品と同様に評価できるため、「医療用医薬品と同様に禁忌の解除が可能」とした。ただし、対象となる医薬品が多数存在するため、情報を整理した上で「使用上の注意」の改訂の要否などについて安全対策調査会に報告する。

(小沼紀子)