ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を予防する9価HPVワクチンは、今年(2023年)4月1日から小学6年生~高校1年生(11~16歳)の女児を対象に公費で定期接種化された(関連記事「HPV9価ワクチン、公費で接種可能に」)。コロンビア・CIC Clinical Research CenterのJaime Restrepo氏らは、9〜15歳時に組み換え9価HPVワクチン(商品名シルガード9)を3回接種した女児および男児に対する10年にわたる長期追跡試験の結果をPediatrics2023年9月5日オンライン版)に発表。「10年の追跡期間中に対象の81%で血清抗体陽性が維持され、ワクチンに含まれるHPV型関連の疾患は発生しなかった」と報告した。

5大陸13カ国で実施

 HPV6/11/16/18/31/33/45/52/58型感染に起因する疾患への9価HPVワクチンの有効性は、免疫原生に基づいて16~26歳の女性で確立されている。また、9~15歳の男児と女児でも有効と推定されている。

 Restrepo氏らは今回、接種後10年間にわたる9価HPVワクチンの長期免疫原生、有効性、安全性を評価する第Ⅲ相試験の長期追跡試験を実施した。対象は、13カ国・地域(ベルギー、ブラジル、コロンビア、コスタリカ、ペルー、ポーランド、南アフリカ、韓国、スペイン、スウェーデン、台湾、タイ、米国)で、9~15歳時に9価HPVワクチンを3回接種した女児971例と男児301例の計1,272例、2009~21年まで追跡した。

 主要評価項目は、ワクチン接種後10年間の抗HPV6/11/16/18/31/33/45/52/58の抗体反応の評価で、1日目と7カ月目に全例の血清学的反応を評価。全ての男児と、ランダム抽出した女児600例のサブセットは12、24、36、66、90、126カ月目に血清学的反応を評価した。

 副次評価項目はワクチンに含まれるHPV型の持続感染および関連疾患の発生率。関連疾患は、女児の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)、上皮内腺がん(AIS)、外陰上皮内腫瘍(VIN)、腟上皮内腫瘍(VaIN)、尖圭コンジローマ子宮頸がん、腟がん、外陰がん、男児の陰茎上皮内腫瘍(PIN)、陰茎がん、会陰がん、肛門周囲がん、尖圭コンジローマとした。

関連のがん、尖圭コンジローマは男女とも発生せず

 解析の結果、3回目の接種から10年目の時点でHPV抗体反応が持続していることが示された。9価HPVワクチンの全てのHPV型において、抗体価の幾何平均(GMT)は7カ月時に最大に達し、その後12カ月にかけて最も急激に減少した後、126カ月時まで漸減していた。HPVの種類に応じて、対象の99.6~100%が7カ月時のcLIA検査で血清陽性を示し81.3~97.7%は126カ月時にも血清陽性を維持していた。

 女児において、6カ月以上持続する全てのHPV型関連の感染発生率は、1万人・年当たり52.4例だった。関連疾患は1万人・年あたり2.2例で、高悪性度のCINおよびVIN、VaINは発生しなかったが、CIN1 が84カ月目に1例認められ、その後の子宮頸部細胞診で結果は陰性だった。男児における6カ月以上持続する感染の発生率は、1万人・年当たり54.6例で、関連疾患の発生はなかった。

 追跡期間中にワクチン関連の重篤な有害事象および死亡は報告されず、中止理由として最も多かったのは脱落と追跡不能だった。

 今回の結果から、Restrepo氏らは「9~15歳の女児と男児に対する9価HPVワクチンの3回目接種後、10年間にわたる免疫原性の持続および対象のがんや尖圭コンジローマ予防の有効性が実証された」と結論している。

(平吉里奈)