米・Harvard Medical SchoolのChristopher M. Worsham氏らは、夏季から冬季(8月~翌年1月)に出生しインフルエンザワクチン接種を受けた幼児を対象に、誕生月別のインフルエンザ診断率を特定する準実験的研究を実施。その結果、インフルエンザ診断率は10月生まれの児で最も低かった。ただし、インフルエンザ感染リスクそのものに誕生月による差はなく、診断率の差は幼児では誕生月の年次予防健診に合わせたインフルエンザワクチン接種が多く、10月生まれの児で米疾病対策センター(CDC)が推奨するシーズン到来直前の接種割合が高いことが示された。詳細は、BMJ2024; 384: e077076)に掲載されている。

2〜5歳児81万9,223例のデータで検証

 対象は、誕生月が8~1月で2011~18年にインフルエンザワクチン接種を受けた2〜5歳児81万9,223例(女児48.9%、平均年齢3.5歳)。米国の被雇用者健康保険データベースからchild-seasonレベル(例えば、同一の児から4シーズン分のデータが得られた場合、4 child-seasonとする)でデータを抽出した。8~1月生まれに限定したのは、これらの誕生月が冬季に流行するインフルエンザのワクチン接種タイミングに影響する可能性が最も高いためである。

 解析は準実験的手法を用いた。まず、誕生月によりインフルエンザ診断率が異なることを特定し、それが誕生月による感染リスクの差や、対象児・同胞・親の背景因子による影響かどうかを検討した。次に、誕生日の前後に年次健診を受ける児の割合と、年次健診と同時にインフルエンザワクチン接種を受ける児の割合を特定。続いて、誕生月が異なる児の背景が同等になるように、ロジスティック回帰モデルを用いて種々の背景因子とインフルエンザ感染リスクおよびワクチン接種タイミングとの関連を検討した。

 主要評価項目は、インフルエンザワクチン接種を受けた幼児における誕生月別のインフルエンザ診断率とした。

年次健診は誕生月が半数弱で、ワクチン接種は健診と同時が多い

 計126万1,164 child-seasonのデータが得られた。

 全体的に10月のインフルエンザワクチン接種が最も多かった(37.3%)。接種月別でインフルエンザ診断率が最も低かったのは、11月または12月に接種を受けた児だったが、交絡因子の影響が考えられたため、誕生月と年次健診およびワクチン接種のタイミング、インフルエンザ感染リスクの関連についてさらに検討した。

 年次健診は56.8%が誕生月の前後2週間に受けており、インフルエンザワクチン接種はこの年次健診日に同時に受ける割合が最も多かった。ただし、12月と1月生まれの児は秋季のうちに接種を受ける割合が多く、年次健診日における接種率は他の誕生月の出生児と比べて低かった。

10月生まれは10月接種が突出して多く診断率は低い

 患児の背景およびインフルエンザ感染リスクに、誕生月による差は認められなかった。一方、ワクチン接種タイミングは誕生月により異なり、10月生まれの児は10月にワクチン接種を受ける割合が48.9%と、他の誕生月の児(27.3~40.2%)と比べ突出して多く、平均接種時期で見ても8月生まれの児より遅く、12月生まれの児よりも早かった。

 10月生まれの児は、インフルエンザ診断率が最も低かった(調整後オッズ比0.88、95%CI 0.85〜0.92)。例えば、8月生まれの児の診断率3.0%に対し、10月生まれでは2.7%だった。

 例年、インフルエンザワクチンの備蓄は夏ごろに整うが、CDCは流行のピークとなる11月~翌年1月に免疫獲得期間が一致するよう9~10月の接種を推奨している。Worsham氏らは「幼児においてこの推奨を支持する臨床的エビデンスは、これまでほとんどなかったが、誕生月によるインフルエンザワクチン接種タイミングの相違に着眼した今回の大規模な準実験的研究で、10月に予防接種を受ける可能性が最も高い10月生まれの児でインフルエンザ診断率が最も低いという知見が示された。幼児においてもCDCの推奨が適切であることが実証された」と結論している。

(小路浩史)