植物由来の食品を質により分類した研究において、ベジタリアンは閉経後に骨折リスクが上昇するという従来の認識が覆された。スペイン・Universidad Autónoma de MadridのMercedes Sotos-Prieto氏らは、植物由来の食品を健康的なものとそうでないものに分類し、米国のNurses' Health Study(NHS)に参加した閉経後女性を対象に、菜食中心の食生活と大腿骨近位部骨折リスクとの関連を検討。菜食中心の食生活を長期間続けてもリスクは上昇しないことが示唆されたと、JAMA Netw Open2024; 7: e241107)に報告した。

植物性食品を健康的かどうかで分類し動物性食品も加えて評価

 ベジタリアンの食生活と骨密度低下および骨折リスク上昇との関連は、複数の研究で示されているが、植物由来の食品全てが健康的とは限らない。しかし、植物性食品を質により分類して骨折リスクとの関連を検討した研究は行われていない。

 今回の研究対象は、1984~2014年にNHSに参加した閉経後女性7万285例(平均年齢54.92±4.48歳)。白人以外の人種は人数が少ないため除外した。NHSでは、大腿骨近位部骨折については隔年、食生活については4年ごとに、質問票により調査している。

 植物性食品の質の評価には、以前の研究(Pros Med 2016; 13: e1002039)で確立されたPlant-Based Diet Index(PDI)という指標に基づき、healthful PDI(hPDI)とunhealthful PDI(uPDI)を用いた。PDIでは、18種類の食品を摂取頻度(1日のサービング数)により五分位範囲で1~5点の点数を付けて半定量化し、これらを健康的な植物性食品、健康的でない植物性食品、動物性食品の3群に大別して評価する。

 hPDIでは、健康的な植物性食品を摂取頻度により1点(最低)~5点(最高)で評価し、健康的でない植物性食品と動物性食品には、逆に摂取頻度が最高の場合は1点、最低の場合は5点となる逆順スコアを付ける。一方、uPDIでは、健康的でない植物性食品を摂取頻度により1点(最低)~5点(最高)を、健康的な植物性食品と動物性食品には逆順スコアを付与する。動物性食品も含めた2通りの評価法を用いることで評価精度が高まる。時間依存性共変量を考慮したCox比例ハザード回帰モデルにより、合算スコアと大腿骨近位部骨折との関連を検討した。

長期の菜食による骨折リスク上昇はなし

 最長30年の追跡期間中に2,038件の大腿骨近位部骨折が発生した。菜食中心の食生活を長期間遵守した場合、hPDIとuPDIのいずれも大腿骨近位部骨折リスクとの関連は認められなかった〔hPDI:最低五分位に対する最高五分位のハザード比(HR)0.97、95%CI 0.83~1.14、傾向性のP=0.45、uPDI:同1.02、0.87~1.20、傾向性のP=0.48〕。

 しかし、直近の食生活のみに限定した場合、大腿骨近位部骨折リスクはhPDIで21%低下(HR 0.79、95%CI 0.68~0.92、傾向性のP=0.02)、uPDIで28%上昇した(同1.28、1.09~1.51、傾向性のP=0.008)。

 短期の食生活でのみ関連を認めた理由について、Sotos-Prieto氏らは「①不健康な植物性食品を多く摂取することが、短期的なカロリーや蛋白質、微量栄養素の不足による体力や骨の健康度の低下につながり、転倒・骨折を引き起こした、②因果の逆転が生じた(もともと骨折リスクが高かった人が食生活を変えた)」などと推察し、「これらについては、今後の研究で明らかにすべき」と指摘した。その上で「大腿骨頸部骨折のリスクに関して、菜食中心の食事を長期間続けることの安全性が示された」と結論している。

※健康的な植物性食品:全粒穀物、果物、野菜、ナッツ、豆類、植物油、お茶またはコーヒーの7種。健康的でない植物性食品:フルーツジュース、甘味料入り飲料、精製穀物、ジャガイモ、菓子やデザートの5種。動物性食品:動物性油脂、乳製品、卵、魚介類、肉類(家禽・赤身肉)、その他の動物性食品の6種

(小路浩史)