米・University of California Irvine School of MedicineのNatasha Mesinkovska氏らは、12歳以上の円形脱毛症(AA)の患者を対象にリトレシチニブを評価した国際多施設共同二重盲検ランダム化比較試験用量設定試験ALLEGRO-2b/3の事後解析を行い、全頭型脱毛症(AT)および全身(汎発型)脱毛症(AU)の患者に対する有効性と安全性を評価。「48週間のリトレシチニブの投与によりATとAUに対する有効性と安全性が示された」J Dermatol2024年9月27日オンライン版)に報告した(関連記事「円形脱毛症に新薬リトレシチニブが有効」)。

AAの約10~35%は重度に進行

 AAの中でもATは頭皮の毛髪が完全に抜け落ちる病態、AUは頭皮、顔、体の毛髪が完全に抜け落ちる病態で、AA患者全体のうち約10~35%はATやAUなど重度のAAに進行するといわれている。どのタイプのAAでも自発的に毛髪が再生する可能性はあるが、AT/AU患者の10%にも満たない。

 リトレシチニブはALLEGRO-2b/3試験において12歳以上のAAおよび頭皮脱毛が50%以上の患者に対し有効性が示され、2023年に重度のAA成人および12歳以上の小児に対して承認されている。Mesinkovska氏らは今回、同試験のサブグループ解析を実施し、ATおよびAU患者を対象に最大48週間のリトレシチニブの有効性と安全性を評価した。

 患者は24週間の①リトレシチニブ10mg、②同30mg、③同50mg、④4週間のリトレシチニブ200mgの負荷投与後に20週間のリトレシチニブ30mgもしくは50mg、⑤プラセボーのいずれかに割り付けられた。その後、プラセボに割り付けられた患者は4週間のリトレシチニブ50mgまたは4週間のリトレシチニブ200mgの負荷投与後に20週間のリトレシチニブ30mgまたは50mgに切り替えられた。リトレシチニブ10mgは用量範囲および薬物動態の目的のみで評価されたため、解析には含まなかった。

 主要評価項目は、24週時点での脱毛症の重症度を評価するSALTスコア20以下の達成率。副次評価項目は患者評価に基づくPGI-Cスコアが「中程度に改善」または「大いに改善」を達成した割合、患者満足度などだった。

48週時にはさらにスコア上昇、満足度も増加

 ALLEGRO-2b/3でランダム化された718例のうち、151例(21%)がAT群、147例(20%)がAU群だった。

 解析の結果、24週目にSALTスコアが20以下を達成した割合はAT/AU群で7~14%、AT群で7~21%、AU群で4~10%だった。プラセボを投与された患者は、いずれの群においてもSALTスコアが20以下を達成した患者はいなかった。48週目ではAT/AU群で13~31%、AT群で11~27%、AU群で6~41%と増加していた()。

図. SALTスコア20以下を達成した患者の割合

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J Dermatol(2024年9月27日オンライン版

 24週目におけるPGI-Cスコアの「中程度に改善」または「大いに改善」を達成した割合は、AT/AU群で25~43%、AT群で32~42%、AU群で12~50%だった。プラセボを投与された患者では順に0~3%、0~7%、0%だった。反応率は48週目まで上昇した。

 24週目における患者満足度で満足(やや満足、中程度、非常に満足)を報告した患者の割合は、AT/AU群で48~57% AT群で44~63%、AU群で30~64%だった。プラセボを投与された患者では順に0~16%、0~29%、0~6%だった。満足と答えた患者は48週目には全体的に増加していた。

 多く報告された有害事象は鼻咽頭炎、頭痛、上気道感染症で、AT/AU患者における安全性プロファイルは、既に報告されているAA全体集団のものと一致していた。

 以上より、Mesinkovska氏らは「48週間のリトレシチニブ治療により、AT/AU患者における有効性と許容できる安全性が実証された」と結論している。研究の限界としてAT/AU患者のサンプルサイズが小さいこと、事後解析であるため治療群とプラセボ群の統計的比較はできないことを挙げ、今後については「より重篤なAA患者におけるリトレシチニブの有効性を確認するため、長期治療結果の評価が必要だ」と述べている。

(編集部・平吉里奈)