日本における乳がん術後の乳房再建率は低く、地域差も大きいという課題がある。日本乳癌学会、⽇本形成外科学会、⽇本乳房オンコプラスティックサージャリー学会は11月27日、3学会合同で「乳房再建の説明に関する学会提⾔」を発表。患者の価値観を尊重し、乳房全切除(全摘)患者に再建の選択肢に関する情報を提供すること、乳腺外科と形成外科の連携を主としたチーム医療を推進することを通して、患者が自己決定できる環境の整備が必要だと提言している。
再建率は乳房全摘術の13%にとどまる
乳がん術後の乳房再建をめぐっては、皮弁再建、インプラント再建、リスク低減手術と保険適用範囲が拡大しているにもかかわらず、2022年の再建率は乳房全摘術の13%と低迷している(関連記事「日本の乳房再建率はわずか12.5%、地域差も」)。
同学会提言は、乳房再建に関する情報を提供して患者の自己決定を促し、希望者に対して乳房再建を適切に提供できるよう、乳がん⼿術/乳房再建の担当医に向けて以下のようにまとめられている。
乳がん⼿術担当医(乳腺外科・外科医など)に向けて
・全切除/部分切除例で⾼度な変形が予想される患者には、乳房再建および連携する再建担当医の存在について説明。
・保険適⽤/⾼額療養費、治療スケジュールについて説明。
・必要以上の⼿術を受けたくない患者には「再建しない」選択も含めて説明。その場合の補正下着やエピテーゼの存在について説明。
・乳がん⼿術と同時に⾏うか(⼀次再建)、後で⾏うか(⼆次再建)の選択肢がある。がんの治療中に再建について決めたくない患者には⼆次再建について情報提供。
・術後治療の内容や併存症などの問題で⼀次再建が難しい場合は、⼆次再建について情報提供。
・カルテまたは⼿術同意書に再建術の情報提供を⾏ったことを記載。
・上記を説明の上で、詳細な説明もしくは施⾏を希望する患者には再建担当医(形成外科)の受診を勧める。場合により他施設への紹介も検討(⼿術前に再建担当医と会い、再建の選択肢を知ることで、結果に対してより現実的な期待を持つことができる)。
乳房再建担当医(形成外科医など)に向けて
・患者には再建の時期や流れ、再建⽅法(インプラント、各種⽪弁、脂肪注⼊)に関して情報提供し、保険適⽤についても説明した上で、それぞれに合った決断ができるように⽀援。
・⾃施設で再建をしていない、もしくは⾏っていない治療法を希望する患者には他施設を紹介。
・合併症(感染、破損、⾎流不全、創治癒遷延など)、瘢痕、知覚鈍⿇などを含めて説明。
・乳頭乳輪再建についても説明。
乳房再建に対する患者の価値観はさまざまであり、年齢を問わず、適切な情報提供と⾃⼰決定権の尊重が求められる。なお、同提言の全文は日本乳癌学会の公式サイトに掲載され、制度に関する情報なども記載されている。
(編集部・畑﨑 真)