厚生労働省が公表した2024年の人口動態統計の速報値で、出生数が過去最少を更新した。政府は「こども未来戦略」に基づき、児童手当拡充などの少子化対策を本格化させており、効果を挙げられるかが問われる。また各自治体でも、独自施策で子育て環境を改善させようとする動きが目立つ。一方で、財政力によってサービス内容に地域差が生じる課題も見受けられる。
 こども未来戦略では、年3兆6000億円規模の少子化対策を講じる。児童手当は所得制限を撤廃した上で、支給対象を高校生の年代まで拡大。親の就労の有無に関係なく保育所を一定時間利用できる「こども誰でも通園制度」も段階的に実施している。政府は、子を産み育てやすい社会の実現を目指す。
 各自治体も国の対策に上乗せする形で、独自策を打ち出している。1人の女性が生涯に産む子どもの推計人数を示す「合計特殊出生率」が23年に全国で初めて1を切った東京都は、経済的な不安定さや、仕事と子育ての両立の難しさが背景にあると分析。全国に先駆けて所得制限のない高校授業料の無償化を実現しており、9月からは第1子の保育料無償化も始める方針だ。
 しかし、豊かな財政力に裏打ちされた大規模事業に対して、さらなる東京一極集中が進むとの懸念も出ている。千葉県の熊谷俊人知事は「本来、国がやるべきことを、ここまで都がやると、格差がどんどん広がる。われわれは努力で埋めることはできない」と主張する。
 人口減少が著しい地方も、試行錯誤を重ねる。岡山県奈義町は、若い家族への住宅供給や各種支援金で子育てを後押し。合計特殊出生率は05年の1.41から、19年は当時全国トップクラスの2.95へ上昇した。しかし、若い世代の流出や自然減により、人口は約6700人から約5800人へ減少。担当者は「定住しなくても町と関わり続ける『関係人口』づくりに取り組む」と強調する。 (C)時事通信社