話題

コミュニケーション技術磨け
医師がワークショップ

 ◇患者はデメリット過大に

 治療によるベネフィット(利益)とデメリット(不利益)をどのように患者に提示しているのか。また、ベネフィットとデメリットをきちんと理解している患者はどれくらいいるのか。投与する薬剤による効果と副作用の問題が典型的な例だろう。

 ディスカッションでは、「皆さんがやっていますよ」と説明すると受け入れられやすくなり、次に副作用を説明する、との報告もあった。

患者役と医師役でロールプレイ

患者役と医師役でロールプレイ

 しかし、人は一般的にメリットよりデメリットを気にする傾向があるようだ。ワークショップでも「治療にはリスクが伴う。ただ、小さなリスクでも過大に捉える傾向がある」という声が上がった。

 ではどうしているのか。「『このような症状が表れたら、すぐに伝えてください』というくらいにとどめる」という報告とともに、「副作用について説明しても、理解できる患者は半数程度だろう。それは年齢よりも個人的な要素が大きいと思う」とする指摘があった。

 ◇嫌な患者の役演じる

 ロールプレーでは参加者が2人一組になり、医師役と患者役を演じる。「配られた紙を読み、1分間で役の準備をしてください。患者を演じる人は、『一番嫌だなあ』と思うタイプを思い浮かべてくださいね」。冗談を交えた進行役の指示が飛んだ。

 参加者のテーブルを回ってみると、関節リウマチを患う40歳の男性か女性の患者で、既婚者、二人の子どもを持つという患者像が設定されており、ロールプレーが始まった。

 医師役「内服薬は1日に1~2回、注射は週に1回です」

 患者役「感染症は大丈夫でしょうか。金銭面も心配です。今は余裕がありますが、子ども二人が進学するようになると治療費の支払いが厳しくなります」

 医師役「治療費は月に4万円くらいからです。とにかく、リウマチの症状を(軽減する)寛解状態にもっていきましょう。感染症もきちんとコントロールできます」

 ロールプレー後には、「思い切り嫌な患者に徹し、『どの治療薬が一番良いのですか』などと聞いてみました」という感想も聞かれた。今回の試みは医療に限らず、異なる分野にも応用できそうだ。(鈴木豊)

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