治療・予防

寝起きに多い手首の違和感―橈骨神経まひ
動かせない、上がらない、甲にしびれも

 橈骨(とうこつ)神経まひは、ある朝突然、手首を反らすことができないという症状に見舞われる病気で、腕枕をすることによって生じる場合があることからハネムーン症候群ともいわれる。手首が垂れ下がったまま動かせず、脳卒中によるまひかもしれないと慌てて受診する人もいる。神戸労災病院(神戸市)整形外科の金谷貴子部長に聞いた。

 ▽原因は神経の圧迫

 「朝起きた時など、眠りから目覚めた際に症状に気付くことが特徴です」と金谷部長は言う。左右どちらかの手首から先が垂れ下がり、手首を持ち上げようとしても動かない、かつ指は曲げられるが伸ばせないといった状態になることから、ドロップハンドとも呼ばれる。また、親指と人さし指の甲側(手のひらの反対側)にしびれを伴う。

変な体勢で寝ないこと。うたた寝の時も気を付けて

変な体勢で寝ないこと。うたた寝の時も気を付けて

 原因は、手首や手指の運動や知覚をつかさどる橈骨神経が障害を受けることによる。橈骨神経は脊髄から出て上腕、前腕を通り指先にまで至る大きな神経だ。上腕の中央部では骨の外側を通っているので外からの圧迫を受けやすい。

 患者に前夜のことを尋ねると、たいていが「酒を飲み過ぎた」「睡眠薬を飲んだ」と話すという。「泥酔して腕に頭を乗せたまま爆睡した場合、通常なら同じ姿勢が続くと無意識に姿勢を変える反射が働きますが、アルコールのせいでその働きがまひします。睡眠薬も同様です」と金谷部長。

 しかし、橈骨神経まひは起床時に気付くものだけとは限らない。例えば、ラッシュ時のバスや電車内で、バッグが腕に押し当てられたまま身動きできなかった、椅子に座り腕に頭を乗せて昼寝をしていたという例もある。また、骨折が原因となる橈骨神経まひもある。骨折で神経が損傷した場合には、神経に対する処置が不十分だと、骨折が完治してもまひは治らない。

 ▽手首の固定と服薬

 診断には、まず問診を行うことが大切だ。補助検査としてX線撮影、磁気共鳴画像装置(MRI)検査、筋電図検査などを行い、頸椎(けいつい)のずれや腫瘍の有無などを確認し、他の病気との区別をする。

 原因が圧迫によるものと分かれば、保存的治療で経過を見る。神経細胞の修復のサイクルは約3カ月。回復までの間、手首に装具を装着して手を使いやすくすることで、握力の低下を最小限にとどめる。また、末梢(まっしょう)神経の修復を助けるビタミンB12を服用する。3~4週間を過ぎたころから少しずつ回復の兆しが見え始め、多くは6~8週間で手首の動きがだいぶ戻ってくる。

 「橈骨神経まひの予防は、変な姿勢で寝ないことです。お酒や睡眠薬を飲んだ時だけでなく、うたた寝や昼寝の時も気を付けてください」と金谷部長は注意を促している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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