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生活習慣の是正で薬を減らす
高齢者の安全な薬物療法

 複数の慢性疾患を抱え、多種類の薬剤を服用する高齢者では、ふらつきや転倒、食欲低下などの副作用に悩まされる人が多い。東京大学医学部付属病院(東京都文京区)老年病科の秋下雅弘科長は、「特に75歳以上の高齢者は、服用する薬剤の種類や量を増やさずに、生活習慣を見直す意識を持つことが大切です」と語る。

 ▽4割が5種類以上服用

 高齢者は薬を分解する体の機能が低下するため、副作用が出やすくなる。実際に、薬の種類が増えると、高齢者では副作用のリスクが上昇することが分かっている。出現しやすい副作用は、ふらつき、転倒、認知機能の低下、抑うつ、せん妄(幻覚や興奮などの精神症状)、食欲低下、排尿障害、便秘など多種多様である。

 慎重な薬剤の処方が求められるが、医療現場で十分配慮がなされているとは言い難いのが現状だ。1人

患者が1カ月に一つの薬局で受け取る薬剤数を厚生労働省が調べたところ、75歳以上の4分の1は7種類以上を受け取っており、5種類以上は4割に上った。

 例えば、不眠を訴える高齢者に処方されることの多いベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬は、ふらつきや認知機能低下、転倒による骨折などの副作用を生じる例がある。そうしたケースでは、薬剤の中止や減量も検討することになる。ただし、秋下科長は「薬の服用は自己判断で中止してはいけません。心配な点があれば、かかりつけ医や薬局の薬剤師に相談してほしい」と呼び掛ける。

 ▽生活習慣の改善を

 特に不眠症の治療薬は、高齢者に漫然と処方される傾向があるため、不眠の原因をしっかり探った上で処方すべきかどうかを検討する必要があるという。

 秋下科長は「高齢になると熟睡できるのは5時間程度。夕食後にすぐに寝てしまうと、夜中に目が覚めて眠れなくなります。それを理由に睡眠薬の処方を希望すると、本来必要のない薬剤の数を増やす原因につながります」と指摘する。

 そして、不必要な薬剤を減らすには生活習慣の改善が必要で、非薬物療法が重要になると強調する。「遅寝早起きの生活に切り替え、運動は血圧の高い早朝を避けて日が高くなってから行うこと。また、野菜と肉を多く取り、炭水化物は控えるようにして、薬の量や数に頼らない生活スタイルを心掛けましょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)

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