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若年化が進む子宮頸がん
性交で男女にHPV感染 陰茎、肛門、中咽頭などのがん原因にも

日本は0.3%と極めて低い

日本は0.3%と極めて低い

 0.3%に急低下

 HPVワクチンは定期接種を開始した2013年当初、接種率が約70%と高かったが、副反応に関する報道などの影響もあって積極的な勧奨が中止されると0.3%に急低下した。

 子宮がん検診の受診率も4割以下と低い。中川氏は「このままではワクチンを接種した学年だけ子宮頸がんがガクッと減り、また元に戻るという由々しき事態が起こる。世界中の研究者が固唾をのんで見守っている」と、現状を憂えた。

 スウェーデンやイギリスなど諸外国では約8割がワクチンを接種しており、中川氏は「欧米では子宮頸がんが過去のがんになると言われている」と指摘。「日本だけ患者数が増えている。異常な事態だ」とした。

HPVが原因となる割合=中川恵一氏提供に基づき作成

HPVが原因となる割合=中川恵一氏提供に基づき作成

 ◇HPVで陰茎がん、中咽頭がん

 HPVは子宮頸がん以外にも、外陰がん陰茎がん、肛門がん、中咽頭がんなど、多くのがんの原因になり、男性にもワクチン接種は有効な予防策だ。

 フィンランドの最近の報告では、HPVに関連して発生する浸潤がん(進行がん)がワクチン接種した人ではまったく発生していないという。

 ◇長かった手術主流の時代

 子宮頸がんの治療法には、手術、放射線、化学療法がある。中川氏は「世界標準のガイドラインでは放射線療法が推奨され、欧米では2期の子宮頸がんの8割に放射線治療が行われている」と指摘。日本でも近年は約6割に放射線治療を中心とした治療が行われているが、手術が主流の時代が長かった。

1期は手術が中心だが、2期以降は放射線を中心とした治療が多く行われている(日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会報告2017年度患者年報から作成)

1期は手術が中心だが、2期以降は放射線を中心とした治療が多く行われている(日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会報告2017年度患者年報から作成)

 子宮頸がんを発症した重田さんは「手術でこんなにたくさん切りたくない、傷も残るし、後遺症も怖い」と感じ、夫と共に治療法の情報を集めた。放射線治療でも手術と同じ効果があると知り、最終的に化学療法を組み合わせた放射線化学療法の治療を受けた。

 現在は登山を楽しんだり、子宮がんの患者会の活動に参加したりするなど、充実した生活を送っている。

 ◇患者自身も情報収集を

 中川氏は「(手術と放射線治療の)治癒率は同等だが、手術後はリンパ浮腫、排尿障害などが起こりやすいことを考えると、放射線治療という選択肢を考えてもよいのではないか」と指摘した。

 子宮頸がんの予防、早期発見、治療選択を適切に行うためには正しい知識が不可欠。婦人科系疾患の予防啓発を行う一般社団法人シンクパールの難波美智代代表理事はセミナーで「子宮頸がんは妊娠や出産の可能性、人生の希望を奪う深刻な病気。私自身も子宮を失った。同じような苦しみをもつ女性を一人でも少なくしたいと願っている」とした。(医療ジャーナリスト・中山あゆみ)

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