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新型コロナウイルス感染の検査でCTを安易に使えない理由 井田正博・日本放射線科専門医会理事長

 ◇確定診断できない

 海原 症状が出る前に、CT検査でウイルスを検出できるという確実なデータは、まだないのですね。レントゲン検査とCTでは、CTの方が診断に役立つということは言えるのでしょうか。

 井田 胸部レントゲン検査は簡便で、放射線被ばく量も極めて少なく、肺炎や肺がん、肺水腫などの診断に有用な検査です。

 一方、CTは、肋骨(ろっこつ)や肺血管など、正常構造との重なりを避け、肺野の濃度変化を評価できることから、病変が淡く、小さい段階で、存在診断や鑑別診断(病変が肺炎か腫瘍か、良性か悪性か)に有用です。

 従って、新型コロナウイルス肺炎においても、CTの方が早期検出に有用なことは明白です。

 ただし、新型コロナウイルス肺炎は、肺の末梢(まっしょう)に「すりガラス影」を呈すると報告されていますが、これは新型コロナウイルスに限らず、他のウイルス性肺炎や、さまざまな疾患でも、同様の所見を示します。

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から下船したオーストラリア人を乗せたチャーター機が豪ダーウィン空港に到着し、バスの周りで待機する関係者=2020年2月20日【EPA時事】

 ですから、CTで新型コロナウイルスによる肺炎を疑うことができても、CTのみで確定診断はできません。

 以前に罹った肺炎の痕の瘢痕(はんこん)が「すりガラス影」として写ることもあり、特異的な所見ではありません。

 従って、症状のない、もしくは厚労省の受診の目安に合致しない場合に、早期診断を期待してスクリーニング目的でCTを施行することは意味がありません。

 ただし、放射線診断専門医としては、他の目的でCTを撮影した際に、特に疑わしい「すりガラス影」を見つけたときは、主治医に臨床経過や現在の状態から  新型コロナウイルス肺炎の可能性がないか、再確認するよう、画像診断報告書に記載しています。

 ◇本来診療の妨げに

 海原 CTが有効な診断法ではと思い、心配な人が各診療所を多数受診した場合、どのようなことが起こるとお考えですか。

 井田 
連日の報道で、感染、発症人数が徐々に増えていく中、通勤・通学で不特定多数の人たちと接する中、「自分にも感染が」と心配され、早期診断をと望まれるお気持ちは十分理解できます。

 しかし、説明してきましたように、現段階ではCTを含む画像検査は、新型コロナウイルス肺炎の早期診断法として科学的に立証されておらず、臨床現場においても、そのことは認識されています。

 この段階で、新型コロナウイルス肺炎のスクリーニングとして、感染症が専門でない医療機関でCTを施行すると、医療機関としては最善の感染予防対策を講じる必要があるため、CT検査室の消毒、除菌のための一時的閉鎖や、関わったスタッフの勤務制限などで、本来の診療の妨げになる可能性があります。

 この冬の時期は、新型コロナウイルス肺炎より、インフルエンザや他の肺炎の患者さんがより多く、その方々の診療、治療も重要です。従って、心配される皆さまにも、より慎重な対応が望まれます。

 まずは、厚労省がホームページで発表している相談、受診の目安やQ&Aを参考にし、必要に応じて電話相談窓口などに相談ください。

 最後に、風邪症状と37.5度以上が4日以上続く人(持病がある人は2日以上)、だるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある人は、直ちに帰国者・接触者相談センターにご相談ください。

(文 海原純子)


 井田 正博(いだ・まさひろ) 1960年東京都生まれ。信州大学医学部を卒業し、東京慈恵会医科大学青戸病院放射線科医員などを経て、94年東京都立荏原病院放射線科部長、2019年から独立行政法人国立病院機構水戸医療センター放射線科部長。日本放射線科専門医会理事長のほか、東京女子医科大学放射線科非常勤講師を務める。

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