医学生のフィールド

先輩医師から学ぶ「豊かな人生」を創る秘訣-医学生がオンライン講演会企画

 2004年から医師免許取得後の新医師臨床研修制度が始まり、診療を行う医師には2年以上の臨床研修が義務化されました。ひと昔前までは、多くの研修医が大学の医局に入り、関連病院で初期・後期研修することが通例でしたが、現在は出身大学にかかわらず自由に研修先を選べるようになりました。多様な働き方を選択できる一方で、学生時代からキャリア選択の決断を迫られます。

 8月22日、Twitterでキャリア選択、働き方とお金の勉強などをつぶやいて多くのフォロワーから支持されている消化器内科医「Soul-in@焼肉専門医」(以下、Soui-in先生)を招いてオンライン講演会が開催されました。100人を超える学生や若い医師たちと一緒に医師のキャリアについて考えました。

Soulin先生イベント集合写真

Soulin先生イベント集合写真

 ◇マッチングで重要なモチベーションの源

 学部卒業後の初期研修病院は、マッチングというコンピューターが研修先の組み合わせを選ぶシステムで決定します。

 Soul-in先生は、マッチングの準備として以下の二つについて考えて言語化しておくことを勧められました。それらは「①志望科は何科か?」と「②3年目はどんな医者になりたいか?」の二つでした。これらは面接でよく聞かれる事項であるとのことでした。

 ①は自分のやる気のスイッチを知っていることであり、そのためにはある程度その分野を深く勉強していなければなりません。勉強への打ち込み方が垣間見られます。

 ②は、言い換えれば「研修の2年間で何を学ぼうと思っているか」となります。なぜ面接で聞かれるかと言うと、その病院の指導医は、自分たちの病院で研修した結果どんな医者が出来上がるかを分かっているからです。学生の求めるものが得られなければマッチさせないのも優しさだからですね。

 志望科の決定にはさまざまな要素があります。学問、業務内容、その時代の風潮など言い出せば切り口はさまざまです。Soul-in先生が研修医の頃はC型肝炎の治療が劇的に変わる時期でした。各大学の教授も肝臓専門の医師が多く、肝臓診療が盛り上がっていた時代でした。そういった時代背景の他には、悪性腫瘍の診療に携わるか、目に見える病気を相手にする(=画像診断に携わる)か、などさまざまな切り口を教えていただきました。自分なりの切り口で志望の源泉を明確にし、診療科の選択やキャリアプランの構築に役立てると良いと思います。

 自分のモチベーションはどうすれば見つかるでしょうか。ヒントは私たちがこれまで過ごしてきた講義、実習、病院見学などの経験の中にあると思います。そしてそれらを「一生懸命やること」で答えが見つかると先生は話されました。何事も全力で頑張ることで初めて「あぁ、こんなこともあるんだな。勉強になって楽しいな」と思えるものです。「その道を選ぶことも諦めることも、自分がどんな気持ちになるかは全力で取り組まないと分からない」とおっしゃられたことがとても印象的でした。

 ◇職場選びのための自己分析

 マッチングの結果は一見してその後のキャリアに大きく影響を及ぼすように見えます。しかし、マッチングは受験ではありません。希望の病院への入職を勝ち取れたかどうかに一喜一憂せず、神様が選んでくれたと思ってその病院で一生懸命努力することが大事だと思います。ただSoul-in先生は①同期や上司といった「学ぶ環境」②そこから「入ってくる情報」の2点はマッチング先により大きく変わると話されました。

 人が環境をつくり、環境が人をつくるという名言がありますが、大学生活はまさにその通りだったと感じます。自分より勉強を頑張る仲間を見て焦りを覚えたり、将来を真剣に考えている仲間と話したりすると自然とモチベーションが湧いてくる。そんな経験を通して私たちは少しずつ成長してきました。目指す医師像があるならば、それを体現している仲間が多い環境を選びたいと思います。

 Soul-in先生は3年目からは自身が専門としたかった肝臓がんの診療を学ぶべく、より専門性の高い市中病院での勤務をされました。「30歳の時点で『この病気ならあの人に聞け』と言われる存在になりたかった」と話されました。専門施設であったため、肝臓内科で肝臓診療に特化して多くの症例を経験し、学会発表も多くこなしたことが最も大きなスキルアップにつながったそうです。そして出身大学の違う同期や上級医と一緒に仕事をする毎日はとても刺激的だったと話されました。

 さらにSoul-in先生から、大学病院と市中病院両方の勤務経験から「大学病院では医師が多い分、教育環境が整っている。高難度の症例を見れたり、学術活動が経験できたりする」「市中病院では医師が少ない分、担当患者が多かったり、自分で判断したりする機会が多い」などそれぞれの特徴をうかがいました。どちらが良い悪いではなく、自分が適応できそうな環境を考えることが大事です。「そのためには自分がどんな環境なら頑張れるのか、逆にどんな苦労なら耐えられるのかを考えること。自分がどんな人なのかを知っておくことが大事」と自己分析の大切さをメッセージとしていただきました。

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