足の悩み、一挙解決

こむら返りの意外な原因(足のクリニック表参道 理学療法士・久保和也さん) 【PART2】第13回

 【桑原靖院長】足のクリニックでは、医師、看護師のほかにメディカルスタッフとして、足専門の理学療法士が活躍しています。身体の土台となる足は、全体重を受け止めており、さまざまな原因でトラブルが発生しやすい部分です。一口に「足が痛い」といっても、膝や股関節の固さや体幹の弱さが影響している場合もありますし、足の使い方が不適切なために不具合が生じてくる場合もあります。そこで、当院の「歩行機能改善外来」では、歩行・姿勢の評価、関節機能の評価などをもとに、運動療法運動指導、生活指導などを通し、足の病気で悩む患者さんをサポートしています。今回は理学療法士の久保和也さんに、こむら返りの現認とその予防法について解説してもらいます。

突然起こる「こむら返り」

突然起こる「こむら返り」

 ◇突然起こる強烈な痛み

 【久保和也さん】こむら返りを今まで一度も経験したことがない、という人は少ないのではないでしょうか。「足がつった」という状態で突然襲ってくるふくらはぎの痛みは、なかなか強烈で耐え難いものです。足のクリニックを受診する患者さんから、二次的な症状として、よくこむら返りをするという話をうかがうことがあります。中には両脚がいっぺんにつってしまうという人もいて、足の機能に問題があることが、こむら返りの原因と考えられるケースが意外に多いことに気づきます。

 そもそも、こむら返りとは、どんな状態なのでしょうか。心臓や胃など意識して動かせない不随意筋とは異なり、手足などの骨格筋は自分の意志によって動かすことができる随意筋です。ところが、何らかの神経伝達の誤作動によって、自分の意志とは関係なく、筋肉がけいれんを起こし、収縮してしまったのが、こむら返りです。けいれんして筋肉の緊張が高まると、筋肉や筋肉を包む筋膜に過剰な負荷が加わり痛みが生じます。また持続的に筋肉が緊張し続けると血流が滞り、痛みの元になる発痛物質が産生されて痛みを増悪させます。ふくらはぎ〈腓腹(ひふく)筋2本とヒラメ筋の下腿(かたい)三頭筋〉の筋肉に起こるものを、こむら返りと呼びますが、筋肉のつりは足先にも起こりますし、手や体幹部にも起こります。ここでは、ふくらはぎのこむら返りについて解説します。

 こむら返りの原因については、スポーツなどで汗をたくさんかいたときの水分不足、電解質バランスの崩れ、血流障害などが指摘されています。しかし、足の機能が原因でふくらはぎに負担がかかりすぎているという場合が多いことは、あまり知られていないかもしれません。

 こむら返りは、数秒で自然に治まるものから、数分にわたって続くものまでさまざまですが、応急処置としては、縮こまった筋肉をストレッチ(伸ばす)すれば、筋肉のけいれんは治まります。急場しのぎの対策としてはそれでよいのですが、再発を防ぐためには、そもそも生活の中でふくらはぎの筋肉がなぜ張ってしまうのかを考える必要があります。

オーダーメードのインソール(足のクリニック表参道提供)

オーダーメードのインソール(足のクリニック表参道提供)

 ◇アーチ構造を整える

 内科的な要因以外で、ふくらはぎの筋肉が張ってしまう理由は大きくわけて「足」と「お尻」の二つがあります。

 まず、足のアーチ構造がつぶれていると、足元が不安定になり、立っているだけで余計な負担がふくらはぎにかかります。さらに、歩くときの地面をける力が弱くなり、これを補おうと、ふくらはぎの筋力をたくさん使って前に進もうとするので、余計に疲れてしまいます。

 外反母趾(ぼし)や強剛母趾、巻き爪など、足のトラブルの多くはアーチ構造がつぶれた結果として起こっていることが多いため、これらのトラブルを抱えている人は、同時にこむら返りもよく起こります。クリニックを受診する患者さんに、その訴えが多くなるのも自然なことと言えるでしょう。

 ふくらはぎの筋肉(腓腹筋とヒラメ筋)は、そのままアキレスけんにつながり、最後はかかとに付着しています。従って、こむら返りを起こしやすい人はふくらはぎの筋肉が張っているため、その張力がアキレスけんへと伝わり、そこで炎症を起こして腫れてしまう(アキレスけんの炎症)場合もあります。

 足のアーチがつぶれている場合は、インソールを使って物理的にアーチをサポートすることが大切です。指先でタオルをたぐりよせるタオルギャザーが有効などと言われることもありますが、多少、筋肉を鍛えたところで、アーチ構造を強くするほどの効果は期待できません。
インソールはオーダーメードが理想ですが、とくに痛みなどがなければ、市販のインソールを使ってみてもいいでしょう。

 ◇お尻の筋肉を鍛える

 こむら返りを起こすもう一つの原因は、お尻の筋肉が弱いことです。お尻の筋肉には、股関節から脚を外側に広げるときに使う中殿筋、脚を後ろに引くときに使う大殿筋があり、この二つの筋肉の力が弱いと、ふくらはぎの筋肉がより頑張ってバランスをとろうとするため、過剰な負担がかかります。

 また、お尻の筋肉が弱い人は、足をけり出す力が弱くなります。それを補うために、足で地面のけり出しを頑張らざるを得なくなり、ふくらはぎの筋肉がいつもパンパンに張った状態になってしまいます。お尻の筋肉が弱い状態で歩くと、ふくらはぎに負担がかかるため、けいれんが起こりやすくなる状態に陥ります。また、歩行以外の日常生活動作(立ち上がりや階段など)でも、お尻の筋肉の弱さを代償して足を使い続けるため注意が必要です。

 お尻の筋肉を鍛えて、ふくらはぎの負担を軽くすると、こむら返りのリスクが軽減されるだけでなく、ヒップアップにもつながり、ふくらはぎもすっきりしてきます。そこで、大殿筋と中殿筋を鍛える簡単なエクササイズをご紹介しますので、ぜひ試してください。(文・構成 ジャーナリスト・中山あゆみ)

 〔大殿筋を鍛えるエクササイズ〕

 (1)あおむけに寝て、手は脇に置き、背中と足の裏は床につけた状態で、両膝を90度くらいに曲げます。

 (2)床からをお尻を上げ、体のラインと平行になるところで2~3秒キープして、ゆっくり下ろします。これを15~20回×2~3セット行います。腹筋を意識して上げるのがポイントです。

 (3)余裕がある人は、片足をあげた状態で5~10回×2~3セット行います。

 〔中殿筋を鍛えるエクササイズ〕

 (1)横向きに寝て、体を手で支え、下の脚を曲げ、上の脚をまっすぐに伸ばし、上になった脚を上げたり下げたり10~20回×3セット行います。

 このとき、ひざのお皿が壁に対して正面に向くよう注意します。骨盤を開くと、ひざのお皿が天井を向いてしまい、まったく別の筋肉が使われてしまいます。

 (2)左右それぞれ行います。

理学療法士の久保和也さん

理学療法士の久保和也さん


 久保 和也(くぼ かずや) 
 2009年国際医療福祉大学 保健医療学部 理学療法学科卒業、春日部中央総合病院フットケアチームに所属。足病患者のリハビリテーションを7年間経験後、15年に足のクリニック表参道の事務長就任。機能改善外来を設立し、スポーツ障害含む足部疾患全般のリハビリテーションを担当。日本フットケア足病医学会認定士。日本フットケア足病医学会、日本足の外科学会に所属。

   【足のクリニック表参道 桑原靖院長プロフィル】  





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